
🔍 先に結論
- 1年目は「毎日の仕事 → 毎月の締め → 年に1回の仕事」の順で覚えます
- 建設業の毎月の締めの中心は、工事ごとの原価と出来高請求です。ここを2〜3か月目で固めます
- 月次が毎月合っていれば、決算は「12か月分の確認」になり、怖くなくなります
- 年に1回の仕事は全部覚えなくて大丈夫。その月が来る前の月に予習すれば間に合います
建設業経理で覚える順番は「毎日→毎月→年1回」
順番の理由はシンプルです。毎月の締めは、毎日の入力を積み上げたものです。決算は、その毎月の締めを12か月分まとめたものです。
ですから、毎日の入力があやふやなまま決算の勉強をしても、数字が合いません。下から順に積むほうが、結局は早く覚えられます。
建設業ならではの点は、毎月の締めの中心に「工事ごとの原価」と「出来高請求」があることです。一般の会社の経理の本には、ここがほとんど出てきません。だからこそ、2〜3か月目に時間をかけて固めます。
1年目のロードマップ(早見表)
| いつ | 何を覚える | ゴール | くわしい記事 |
|---|---|---|---|
| 1か月目 | 入金の確認・領収書と現場経費・毎日の仕訳 | その日の分をその日に入れられる | 振込・入金確認の実務/現場の経費精算 |
| 2〜3か月目 | 外注先への支払い・出来高請求と入金の照合・工事ごとの原価 | 工事ごとに「売上・原価」が言える | 外注先への支払い管理/出来高払いの仕訳/工事台帳 |
| 4〜6か月目 | 月次資料の作成・会計ソフトと原価ソフトの照合 | 月の数字を社長に説明できる | 月次試算表の作り方 |
| その月の前月 | 決算・源泉所得税・算定基礎・年末調整など年1回の仕事 | 期限の1か月前に準備を始められる | 年間スケジュール |

ここからは、時期ごとに「何を・なぜこの時期に」を短く説明します。例として、私の会社(内装下地の専門工事会社・10月末決算)の流れを入れています。
1か月目|毎日の仕事を「その日のうちに」回す
最初の1か月のゴールは、その日に起きたお金の動きを、その日のうちに記録できることです。ためると、月末に何がなんだかわからなくなります。
入金は、入金予定日に確認する
うちの会社では、元請けからの入金を法人のネットバンキングで、入金予定日に必ず確認しています。回数は月5回ほどです。銀行の使い分けや確認のしかたは「信用金庫とメガバンクで回す振込・入金確認の実務」にまとめています。
領収書と現場の経費を集める
現場で立て替えた経費の領収書は、誰がいつまでに出すかを決めておかないと、月末に集まりません。提出のルールと勘定科目は「現場の経費精算ルールと仕訳」を見てください。
仕訳は「どの工事の分か」をつけて入れる
建設業の仕訳は、金額と科目だけでは足りません。どの工事の費用かを、入力するときに決めておく必要があります。うちの会社では、工事番号を「元請けごと+枝番」でつけています。完成工事高・未成工事支出金など、建設業だけの科目は「建設業の経理の特徴5つ」で先にざっと見ておくと、入力で迷いにくくなります。

2〜3か月目|原価と出来高請求で「毎月の締め」の芯を固める
ここが1年目でいちばん大事な時期です。支払い・請求・原価の3つを、1か月の流れとして2〜3周まわして覚えます。1周目は手順を追うだけで精一杯でも、2周目で「なぜこの順番か」が見えてきます。
外注先への支払い|締め日と支払日を1周する
うちの会社の支払いは、月末締め・翌月末払いです。協力会社の約半分は一人親方で、インボイス(適格請求書)の登録をしていない支払先も多くあります。登録していない相手からの仕入れは、2026年10月1日から2年間、仕入れにかかる消費税の70%を控除できる経過措置で計算します。
請求書のチェックのしかたと仕訳の流れは「外注先への支払い管理」、経過措置の仕訳例は「外注費の仕訳とインボイス経過措置」にあります。
出来高請求|請求した額と入金額を照らし合わせる
うちの会社は、元請けへの請求がほぼ全現場で出来高請求です。工事の進み具合に合わせて請求するので、同じ現場でも入金額が毎月ちがいます。入金を見たら、その月に請求した金額と1件ずつ照らし合わせます。
出来高で受け取ったお金の仕訳は「中間金・出来高払いの仕訳」、請求書に付ける明細の作り方は「出来高明細書の作り方」で解説しています。
工事ごとの原価|材料・労務・外注・経費に分けて集める
1か月目につけた工事番号を使って、費用を工事ごとに集めます。分け方は材料費・労務費・外注費・経費の4つです。迷いやすいのは、材料を元請けから支給されて手間だけ請ける工事です。うちの会社では、この手間請けも「外注費」に入れています。
集めた原価を1現場ずつ並べるのが工事台帳です。書き方は「工事台帳の書き方と管理方法」、まだ完成していない工事の原価をためておく科目は「未成工事支出金とは」を読んでください。

この「毎日・毎月の流れ」を1冊で通して読みたい人には、私が書いたKindle本もあります。
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『建設業の経理 はじめの一冊』をAmazonで見る4〜6か月目|月次資料と「2つのソフトの照合」まで進む
支払い・請求・原価が回り始めたら、次は1か月の数字をまとめて、社長に見せられる形にする段階です。
うちの会社の月次資料は、工事別の原価台帳・会社全体の損益・番頭別の損益・会社と番頭の月の目標の4つです。確定するのは翌月の中旬で、毎月のミーティングで画面を共有して報告しています。月次の試算表の見方は「建設業の月次試算表の作り方・見方」が入口になります。
もう1つ、この時期に覚えたいのが会計ソフトと原価ソフトの照合です。うちの会社は、会計が弥生、工事ごとの原価が「建設原価ビルダー5」です。この2つの数字を毎月突き合わせ、税理士に出す前にも必ず照合しています。片方だけ直して、もう片方を直し忘れる、というずれを月ごとに見つけるためです。
以前のうちの会社はどんぶり勘定で、赤字に気づくのは工事が終わってからでした。今は月次資料があるので、工事の途中で赤字に気づけます。4〜6か月目でこの形まで来れば、1年目の山はほぼ越えています。

年に1回の仕事は「その月の前の月」に予習する
年1回の仕事は、1年目に全部を頭に入れなくて大丈夫です。来月に何があるかだけを知っておき、前の月に手順を読む。これで間に合います。毎年ある主な仕事を、うちの会社のやり方と一緒に並べました。
| 時期 | 仕事 | うちの会社では・補足 | 予習する記事 |
|---|---|---|---|
| 1月20日まで | 源泉所得税(7〜12月分)の納付 | 納期の特例を受けている会社だけ。半年分をまとめて納める | 納期の特例 |
| 7月10日まで | 源泉所得税(1〜6月分・納期の特例の会社)の納付・算定基礎届 | 算定基礎届は、加入している建設国保の組合の相談会で作ってもらう | 算定基礎の結果と給与明細 |
| 10月初旬〜 | 決算準備(10月末決算) | 棚卸は3人で約2日。税理士へは11月中旬に資料を渡す | 決算準備の逆算スケジュール |
| 11〜12月 | 年末調整 | 計算はほぼ税理士にお任せ。社員の書類集めは社内で行う | 年末調整と源泉所得税 |
| 決算後4か月以内 | 決算変更届 | 私が作成・申請している | 決算変更届はいつまで? |
| 人が入るたび | 社会保険の入社手続き | 健康保険が建設国保なので、組合の支部への手続きもある | 建設国保の入社手続き |
源泉所得税の納期の特例は、給与を受け取る人が常時10人未満の会社が、税務署に申請して使う仕組みです。特例を使わない会社は、給与を払った月の翌月10日が納付期限になります。期限が土日祝日にあたる年は翌平日になるので、その年のカレンダーで確かめてください。

月次が合っていれば、決算は怖くない
私は入社して最初の決算で、未成工事支出金の残高が合わず、半日かけて帳簿を追いかけました。決算で数字が合わないと、12か月分のどこにずれがあるのかを探すことになります。
2〜3か月目で工事ごとの原価を固め、4〜6か月目で毎月の照合まで進んでいれば、決算は「12か月分の確認」です。うちの会社では、期末に仕掛かり中の工事が毎年3〜5件あります。この工事の原価を未成工事支出金に残す作業も、毎月の工事台帳が合っていれば落ち着いてできます。決算前の見直し方は「未成工事支出金の決算見直し」にあります。
印刷して使う|1年目チェックリスト
できるようになったものから印をつけていきましょう。上から順に埋まっていくのが理想です。
1か月目
- □ 入金予定日に、ネットバンキングで入金を確認できる
- □ 現場経費の提出ルール(誰が・いつまでに)を知っている
- □ 工事番号をつけて仕訳を入れられる
2〜3か月目
- □ 外注先の締め日・支払日を説明できる
- □ インボイス未登録の支払先がどこか、一覧で言える
- □ 出来高請求の額と入金額を1件ずつ照らし合わせられる
- □ 費用を材料費・労務費・外注費・経費に分けられる
- □ 工事台帳で、1現場の売上と原価を言える
4〜6か月目
- □ 月次の試算表を出して、売上と粗利を説明できる
- □ 会計ソフトと原価ソフトの数字を照合できる
年1回の仕事
- □ 自社の決算月と、決算準備を始める月を知っている
- □ 来月にある年1回の仕事を、前の月に予習している
まとめ:まずは「工事番号のない伝票をつくらない」から
建設業経理の1年目は、次の順で覚えます。
- 1か月目:入金確認・経費・仕訳を、その日のうちに
- 2〜3か月目:支払い・出来高請求・工事ごとの原価を2〜3周
- 4〜6か月目:月次資料と、会計ソフト・原価ソフトの照合
- 年1回の仕事:その月の前の月に予習
順番の土台になるのは、1か月目の工事番号です。どの工事の費用かがわかる伝票さえそろっていれば、原価も月次も決算も、あとから積み上げられます。
このページのチェックリストを印刷して、机の見える場所に貼っておいてください。来月どんな年1回の仕事があるかは、年間スケジュールの記事で月ごとに確認できます。
\ 1月〜12月の期限と、決算・許可更新まで月別に一覧 /
建設業経理の年間スケジュールを見る以上、建設業7年目のおけいでした!
※この記事は2026年10月時点の制度(国税庁・日本年金機構・建設業法)をもとにしています。期限や控除の割合は改正されることがあるので、最新の情報は各機関の案内で確認してください。


