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建設業の経理で理解しにくいのが、労務費の仕訳です。
建設業では、給与として払った人件費を「どの工事の原価か」に振り分ける処理が必要です。これが一般業種との大きな違いです。
私も最初は「給与は給与でいいじゃないか」と思っていましたが、工事ごとの利益を把握するためには労務費を工事原価として管理することが絶対に必要だと学びました。
🔍 先に結論


建設業の労務費は、工事を行う現場作業員に支払う人件費です。大きく2種類に分かれます。
| 区分 | 内容 | 勘定科目 |
|---|---|---|
| 直接労務費 | 特定の工事に直接従事した作業員の賃金 | 未成工事支出金(労務費) |
| 間接労務費 | 現場監督・管理職など複数工事にまたがる人件費 | 工事間接費 または 現場管理費 |

毎月の給与支払い時は、まず「給与手当」として処理し、翌月以降に工事原価へ振り替えるのが一般的な流れです。

| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 給与手当 | 300,000円 | 現金・普通預金 | 260,000円 |
| 預り金(所得税) | 20,000円 | ||
| 預り金(社会保険) | 20,000円 |
給与のうち工事に従事した分を「未成工事支出金」に振り替えます。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 未成工事支出金(労務費) | 240,000円 | 給与手当 | 240,000円 |

工事が完成し引き渡しが済んだ時点で、未成工事支出金を完成工事原価へ振り替えます。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 完成工事原価 | 1,000,000円 | 未成工事支出金 | 1,000,000円 |
労務費・材料費・外注費・経費すべてを合計した金額が、完成工事原価として計上されます。

特定の工事のみに従事した作業員の賃金は、直接その工事の未成工事支出金へ振り替えます。
例:A工事専任の職人の月給25万円 → 全額をA工事の未成工事支出金に計上
複数の工事にまたがって働く現場監督・所長などの人件費は、工事ごとに按分して振り替えます。
按分方法の例:各工事の工事金額比率・作業時間比率・人数比率など

建設業では、一人親方や下請け業者への支払いを「外注費」として処理します。
労務費と外注費は消費税の扱いが異なるため、正しく区別することが重要です。
| 区分 | 消費税 | 源泉徴収 |
|---|---|---|
| 労務費(給与) | 課税なし | あり(所得税) |
| 外注費(業務委託) | 課税あり | 場合による |

給与支払いに伴う社会保険料の会社負担分は、労務費として処理します。健康保険・厚生年金・雇用保険の会社負担分は、工事現場の作業員分は工事原価(労務費)、本社スタッフ分は販管費(法定福利費)として区分します。
| 仕訳タイミング | 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 月次計上時(費用認識) | 労務費(法定福利費) | ××× | 未払費用(社会保険料) | ××× |
| 社会保険料納付時 | 未払費用(社会保険料) | ××× | 普通預金 | ××× |

現場作業員が有給休暇を取得した日は、工事現場での作業がないため、その日の労務費をどう処理するかが問題になります。
実務では、有給取得日の労務費は「工事原価(労務費)」ではなく「販管費(給与手当)」へ振り替える方法が一般的です。工事を特定できない費用は工事原価に含めないというルールが基本です。
| 状況 | 借方科目 | 貸方科目 |
|---|---|---|
| 有給取得日の給与 | 給与手当(販管費) | 給与手当(労務費)からの振替 |
| または最初から | 給与手当(販管費) | 現金・預金(支払時) |
建設業では、複数の工事を同時進行することが多く、各作業員がどの工事に何時間従事したかを正確に把握することが重要です。


建設業では「どの工事に誰がどれだけ働いたか」を把握することが労務費管理の出発点です。現場作業員の日報管理が不十分だと、工事別の原価が正確に計算できず、見積りと実績の乖離も把握できません。
私が実務で使っている方法は、日次の作業日報に「工事番号・作業内容・作業時間」を記入させ、月次で会計ソフトに転記する方法です。時間単価は各作業員の月額給与÷所定労働時間で計算し、工事別の労務費を算定しています。
社会保険料の会社負担分も労務費に含めることを忘れずに。健康保険・厚生年金の会社負担分は給与の約15〜16%に相当します。これを労務費に含めないと、実際の工事コストを過少に見積もることになります。
労務費の管理精度を上げるほど、「この工事は労務費が予算オーバーしている」「この工事の作業効率が低い」といった経営判断に役立つ情報が得られます。原価管理は経理部門だけでなく現場管理と連携して取り組むことが重要です。
建設業の労務費管理で最終的に大切なのは、現場担当者との連携です。作業日報の記録が正確であれば、工事別の労務費は正確に計算できます。逆に作業日報が不正確だと、いくら経理が頑張っても工事別の原価は把握できません。現場と経理が同じ方向を向いて取り組むことが、建設業経理の原価管理の核心です。
労務費管理の仕組みを整備することで、「どの工事に何人工かけているか」「残業が多い工事はどれか」「予算超過の原因は何か」が見えてきます。これらの情報は経営改善に直結する貴重なデータです。
建設業の労務費仕訳で押さえておきたいポイントをまとめます。

建設業の工事原価管理を効率化したい方には、弥生会計 Nextがおすすめです。工事別の原価管理機能も充実しています。