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🔍 先に結論
- 現場で働く自社の作業員の賃金は、工事原価の「労務費」。本社の事務員の給与・役員報酬は販管費
- 月末締め・翌月末払いなら、締め日に「労務費/未払費用」、支払日に未払費用を消す
- どの工事の労務費かは、作業時間の記録をもとに工事ごとの原価台帳で分ける
- 期末に未完成の工事の分は未成工事支出金へ。完成したら完成工事原価へ
建設業の労務費は「現場で働く自社の作業員」の賃金
建設業では、人件費を「誰の給与か」で3つの置き場所に分けます。一般の会社のように、全員を「給与手当」でまとめるのとは違います。
| 誰の給与か | 入れる場所 | 科目の例 |
|---|---|---|
| 現場で作業する自社の作業員 | 工事原価 | 労務費 |
| 現場監督・現場事務所の事務員 | 工事原価 | 経費(うち人件費) |
| 本社の事務員・営業 | 販管費 | 給料手当(従業員給料手当) |
| 役員 | 販管費 | 役員報酬 |
| 一人親方・協力会社への支払い | 工事原価 | 外注費(給与ではない) |
決算変更届で出す「完成工事原価報告書」では、労務費は「工事に従事した直接雇用の作業員の給料等」を指します。現場監督の給料は労務費ではなく、「経費」の中の人件費に入ります(都道府県の決算変更届の記入例による)。
監督が作業もする、事務員が現場にも出る、という会社は珍しくありません。その場合の分け方は会社でルールを決め、顧問税理士と相談して毎期同じやり方にそろえましょう。

毎月の仕訳|月末締め・翌月末払いの例
私の会社の給与は月末締め・翌月末払いです。この場合、働いた月の費用として締め日に計上し、支払日までは「未払費用」にしておきます。
下の金額は説明用の仮の数字です。作業員Aさんの10月分の給与(総支給240,000円)で見ていきます。
①締め日(10月31日):労務費を計上する
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 労務費 | 240,000円 | 未払費用 | 240,000円 |
未払の給与は、工事原価に入るものでも「未払費用」です。材料や外注の未払に使う「工事未払金」にはしません。違いは未払金と未払費用の違い|建設業の計上ミス防止で整理しています。
②支払日(11月30日):天引きして振り込む

| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 未払費用 | 240,000円 | 普通預金 | 200,000円 |
| 預り金(所得税・住民税) | 12,000円 | ||
| 預り金(社会保険料などの本人負担分) | 28,000円 |
天引きした源泉所得税は、原則として給与を支払った月の翌月10日までに納めます(納期の特例を受けている会社は、1〜6月分が7月10日、7〜12月分が翌年1月20日)。特例のくわしい準備は源泉所得税の納期の特例|1月20日に慌てない準備にまとめました。
私の会社は、健康保険が東京土建の建設国保です。建設国保の保険料は本人負担で、給料から天引きしています。協会けんぽの会社とは天引きの中身が違うので、しくみは建設国保+厚生年金の仕組み|なぜ適用除外?を見てください。
③社会保険料の会社負担分:法定福利費
厚生年金保険料などの会社負担分は「法定福利費」です。厚生年金保険料は、その月の分を翌月末日までに納めます。会社は、毎月の給与から前月分の本人負担分を天引きできます。
| 場面 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 月末(会社負担分を計上) | 法定福利費 | 未払費用 |
| 納付日 | 未払費用(会社負担分) 預り金(本人負担分) | 普通預金 |
現場の作業員の法定福利費は工事原価に入れるのが基本です(事務員の分は販管費)。どちらに入れるかは会社で決め、顧問税理士と相談して毎期そろえましょう。雇用保険・労災保険の労働保険料は年度更新で申告・納付するので、流れが少し違います。くわしくは社会保険・労働保険の仕訳で解説しています。
私は最初の決算で、顧問税理士から未払社会保険料の計上忘れを指摘されました。毎月の計上を口座の引き落とし日に合わせている会社も、決算月だけは未払の分を必ず計上しましょう。

私の会社はパソコンに入れて使う弥生会計(デスクトップ版)を使っていて、下の弥生会計 Nextとは別の製品です。これからクラウドの会計ソフトを検討するなら、候補の1つとして公式サイトで機能と料金を確かめてみてください。
労務費を工事ごとに分ける方法
労務費を計上したら、次は「どの工事の労務費か」を分けます。分けないと、工事ごとの利益が見えません。
分け方は3通り|私の会社は「作業時間」で分けています
1人の作業員が月に複数の現場で働くとき、給与を工事ごとに分ける方法は主に3つあります。
| 分け方 | 計算のしかた | 向いている場面 | 気をつけること |
|---|---|---|---|
| 作業時間(私の会社) | 時間単価×その工事で働いた時間 | 1日に2つの現場を回る、半日だけ入る日がある | 毎日、工事ごとの時間を記録する必要がある |
| 日数 | 月の給与×その工事の日数÷働いた日数 | 1日1現場で動くことがほとんど | 半日だけの現場や残業の差が反映されにくい |
| 工事の金額 | 月の給与×その工事の請負金額÷全工事の請負金額 | 作業の記録がないときの仮の分け方 | 実際の働き方と関係ないので、工事ごとの利益がゆがむ |
どれを使うかは会社で決めてかまいません。ただ、工事の金額で分ける方法は「大きい工事ほど労務費が多い」ことになってしまい、本当に手間がかかった現場が見えなくなります。できるだけ作業時間か日数の記録で分けましょう。
私の会社では、自社で作った出面管理アプリに、現場の人がスマホから「どの工事で何時間働いたか」を毎日入力しています。パソコンを開かない現場の人のために、スマホのホーム画面のアイコンから開けるようにしました。それを月ごとに集計して、工事ごとの労務費に分けています。時間単価は、各作業員の月額給与÷所定労働時間で計算しています。
| 項目 | 計算(説明用の仮の数字) | 金額 |
|---|---|---|
| Aさんの時間単価 | 月額給与240,000円÷所定労働時間160時間 | 1,500円 |
| A工事の労務費 | 1,500円×100時間 | 150,000円 |
| B工事の労務費 | 1,500円×60時間 | 90,000円 |
集計表は「縦に作業員・横に工事」で作る
作業員が2人以上になったら、縦に作業員、横に工事を並べた表にすると、工事ごとの合計が一目で出ます。下は説明用の仮の数字です(Bさんは月額給与224,000円÷所定労働時間160時間=時間単価1,400円)。
| 作業員(時間単価) | A工事 | B工事 | 合計 |
|---|---|---|---|
| Aさん(1,500円) | 100時間 150,000円 | 60時間 90,000円 | 160時間 240,000円 |
| Bさん(1,400円) | 40時間 56,000円 | 120時間 168,000円 | 160時間 224,000円 |
| 工事ごとの労務費 | 206,000円 | 258,000円 | 464,000円 |
右下の合計が、その月の現場の人の給与の合計(会計ソフトの労務費)と一致するかを必ず確かめましょう。合わなければ、時間の入力もれか、単価の間違いがあります。
一番下の行の金額を、工事ごとの原価台帳に入れます。会計ソフトでは、労務費に工事ごとの補助科目や部門をつけて分ける方法もあります。
残業代・有給休暇の日の賃金・会社負担の保険料を、どの工事にどう配るかも会社のルール次第です。決めたやり方を税理士と確認し、毎月同じ方法で続けることが大切です。
作業時間の記録が抜けると、ここが全部くずれます。出面表の集め方は建設業の勤怠管理(出面表)が限界な理由と改善方法で紹介しています。

決算:未完成の工事の労務費は未成工事支出金へ
期中は「労務費」のままで大丈夫です。期末に、まだ完成していない工事に集めた分を未成工事支出金(仕掛中の工事の原価)へ移します。
| 場面 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 期末(B工事が未完成) | 未成工事支出金 90,000円 | 労務費 90,000円 |
| 翌期(B工事が完成) | 完成工事原価 ××× | 未成工事支出金 ××× |
未成工事支出金には、労務費だけでなく材料費・外注費・経費も入ります。期首の戻し方など細かい処理は、会計ソフトの設定と税理士のやり方に合わせましょう。決算前の見直し方は未成工事支出金の決算見直し|売上・外注費もれを防ぐで書いています。
外注費とどう違う?労務費との分かれ目
一人親方や協力会社への支払いは、労務費ではなく外注費です。ただし名前だけで決まるわけではなく、働き方の実態で判断されます。
| 区分 | 消費税 | 源泉徴収 |
|---|---|---|
| 労務費(給与) | 不課税(仕入税額控除の対象外) | あり |
| 外注費(請負) | 課税仕入れ | 報酬の種類による |
判断の目安は国税庁の通達に示されていて、所得税の通達は5つ、消費税の通達は4つの観点です。どれか1つで決まるのではなく、総合して判断します。
私も経理を始めた頃は「請求書があれば外注費」と考えていました。毎日同じ職人さんに来てもらっていたケースでは、税理士から「外注か雇用かをはっきりさせるように」と助言されたこともあります。基準の中身は外注費と給与の違い|一人親方は請負か雇用か、国税庁の5つの判断基準で一つずつ確認できます。
パート・アルバイトの社会保険の加入もれに注意
短い時間で働く人も、条件を満たすと社会保険(健康保険・厚生年金保険)に入ります。月額8.8万円の賃金の要件は、2026年10月1日に撤廃されました。
日本年金機構の案内では、いま残っている主な条件は次のとおりです。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 2か月を超えて使われる見込みがある(2か月以内の期間を決めて使われる人は対象外)
- 学生でない
- 会社の規模:厚生年金の被保険者が51人以上の会社など(2027年10月から36人以上、その後も段階的に広がる予定)
ここに挙げたのは、通常の社員より働く時間や日数が短い人の条件です。自社が対象になるか迷ったら、年金事務所に確認しましょう。保険の全体像は建設業の社会保険・労働保険の基礎知識にまとめています。
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▶ 建設業の法定福利費仕訳を解説!工事原価と販管費の分け方・下請への支払いの処理
まとめ:締め日に計上し、作業時間で工事ごとに分ける
- 現場の自社作業員:工事原価の労務費(本社の事務員・役員は販管費)
- 締め日:労務費/未払費用(工事未払金にしない)
- 支払日:未払費用/普通預金・預り金
- 工事ごと:作業時間×時間単価で原価台帳へ
- 期末:未完成の工事の分を未成工事支出金へ
まずは今月の給与で、現場の人と事務の人の給与が別の科目に分かれているかを確かめてみてください。分かれていなければ、来月の締め日から労務費に分けるところが最初の一歩です。

給与と仕訳を同じソフトで扱いたい方は、マネーフォワード クラウド会計も選択肢の1つです。私の会社はマネーフォワードを使っていないので、自社の仕訳に合うかは公式サイトで確かめてから試してみてください。
以上、建設業7年目のおけいでした!


