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建設業の経理で迷いやすい科目のひとつが「法定福利費」です。
法定福利費は一般業種でも馴染みのある科目ですが、建設業では工事原価と販管費に分けて計上するという独自のルールがあります。
さらに近年は、一人親方や下請け業者への発注において「法定福利費相当額」を見積もりに明示・支払う動きが広まっており、その処理方法も理解が必要です。
🔍 先に結論


法定福利費とは、法律で会社が負担することが義務付けられている社会保険料等の費用です。主に以下の3種類があります。
| 種類 | 会社負担分の概要 |
|---|---|
| 健康保険料 | 標準報酬月額 × 健康保険料率 ÷ 2(会社負担分) |
| 厚生年金保険料 | 標準報酬月額 × 18.3% ÷ 2(会社負担分) |
| 雇用保険料 | 賃金総額 × 雇用保険料率(会社負担分) |
| 労災保険料 | 賃金総額 × 労災保険料率(全額会社負担) |

建設業では、誰の法定福利費かによって計上先が変わります。
| 対象者 | 計上先 |
|---|---|
| 現場作業員(工事に従事) | 工事原価(労務費内の法定福利費) |
| 現場監督(工事に従事) | 工事原価(経費内の法定福利費) |
| 本社事務スタッフ | 販売費及び一般管理費(法定福利費) |
| 役員 | 販売費及び一般管理費(法定福利費) |


| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 給与手当(または労務費) | 300,000円 | 普通預金 | 256,500円 |
| 預り金(所得税) | 15,000円 | ||
| 預り金(社会保険・本人分) | 28,500円 |
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 法定福利費(工事原価 or 販管費) | 28,500円 | 未払費用(社会保険料) | 28,500円 |

| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 預り金(社会保険・本人分) | 28,500円 | 普通預金 | 57,000円 |
| 未払費用(社会保険料) | 28,500円 |
建設業では、一人親方(個人事業主)への外注費の見積もり・請求書に「法定福利費相当額」を別途明示することが国土交通省から推進されています。
これは、一人親方の社会保険加入を促進するための取り組みで、元請け・下請けを問わず対応が求められています。

| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 外注費 | 500,000円 | 買掛金 | 546,000円 |
| 法定福利費(工事原価) | 46,000円 |
法定福利費相当額は「外注費」ではなく「法定福利費」として計上します。

法定福利費(社会保険料)の消費税上の取り扱いは、支払先によって異なります。
| 支払先 | 消費税区分 | 理由 |
|---|---|---|
| 社会保険料(健康保険・厚生年金) | 非課税 | 社会保険制度に基づく法定の納付金 |
| 雇用保険料 | 非課税 | 雇用保険法に基づく法定の納付金 |
| 労災保険料 | 非課税 | 労働者災害補償保険法に基づく法定の納付金 |
| 一人親方への法定福利費相当額 | 課税(工事代金に含まれる) | 外注費として処理する部分は課税仕入れ |

建設業では法定福利費の管理が経審(経営事項審査)の評価にも影響するため、正確な処理が求められます。
私が実務で実感したこととして、法定福利費の管理は「どの工事にいくらかかったか」を把握することが核心です。給与計算システムから工事別の作業時間を取り込んで自動按分する仕組みを作ると大幅に効率化できます。


令和2年(2020年)10月以降、建設業許可の更新・新規取得にあたって社会保険への加入が実質的に義務化されました。これにより、建設業では法定福利費の適正な計上と管理がより重要になっています。
社会保険の加入対象となるのは、常時使用する労働者(正社員・パート等)と会社役員です。一人親方については従来通り任意加入ですが、特別加入(労災保険)を現場入場要件とする元請会社が増えています。
法定福利費を工事見積書に明示することが業界標準となってきています。国土交通省のガイドラインでは、元請・下請間の契約における法定福利費の明示が推奨されており、ダンピング防止の観点からも重要な取り組みです。
私が実務で取り組んでいることとして、工事見積書のフォーマットに「法定福利費」の行を設け、材料費・労務費・外注費・経費と並べて見積明細に明示しています。これにより発注者との価格交渉でも根拠を示しやすくなりました。
建設業の法定福利費仕訳は、工事原価と販管費の適切な振り分けが重要なポイントです。この区分を正確に行うことで、工事別の真の原価が把握でき、見積りの精度向上と利益管理に活かすことができます。社会保険の適正加入と法定福利費の見積明示を通じて、建設業界全体の健全化に貢献していきましょう。
建設業の法定福利費を正確に管理することは、コンプライアンス遵守と経営安定の両方に貢献します。現場作業員の社会保険加入と法定福利費の見積明示を通じて、建設業の健全な発展に貢献していきましょう。

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