
🔍 先に結論
- 2026年度の最低賃金は、10月1日から12月2日にかけて都道府県ごとに順に切り替わります。東京は1,280円です
- 日給・月給の人も対象です。1時間あたりに直して比べます
- 通勤手当・家族手当・精皆勤手当・残業代・賞与は計算から外します。総支給額で比べると見落とします
- 新しい金額は発効日以降に働いた分から。締め日の途中で切り替わる会社は注意が必要です
2026年10月からの最低賃金(首都圏の例)
最低賃金は毎年見直され、2026年度は全国加重平均で1,177円(前年度より56円アップ)になりました。切り替わる日は都道府県ごとに違い、10月1日から12月2日までの間に順に発効します。
首都圏の4都県は次のとおりです。右の列は、1日8時間働く人の日給に直した金額です。
| 都県 | これまで | 新しい金額 | 発効日 | 8時間の日給なら |
|---|---|---|---|---|
| 東京 | 1,226円 | 1,280円 | 10月1日 | 10,240円以上 |
| 神奈川 | 1,225円 | 1,279円 | 10月1日 | 10,232円以上 |
| 埼玉 | 1,141円 | 1,196円 | 10月1日 | 9,568円以上 |
| 千葉 | 1,140円 | 1,195円 | 10月1日 | 9,560円以上 |
出典は厚生労働省の「令和8年度 地域別最低賃金 答申状況」です(2026年10月4日に確認)。ほかの道府県の金額と発効日も、同じ一覧に載っています。発効日の確定した情報は、各都道府県の労働局のページで確かめてください。
最低賃金は、パート・アルバイト・日雇い・技能実習生も含めて、雇っている人すべてにかかります。どこの最低賃金を使うかは、原則として働く事業場がある都道府県で決まります。

建設業で見落としやすいのは「時給の人」ではない
最低賃金の確認でつまずくのは、日給や月給で払っている人です。
時給のパートさんなら、新しい金額と時給を並べるだけで済みます。ところが建設業は、現場の作業員さんを日給で、事務や現場監督を月給で雇っている会社が多いですよね。日給や月給は、そのままでは最低賃金と比べられません。
「日給1万円なら大丈夫だろう」「月給20万円を超えているから問題ない」と感覚で判断すると、気づかないうちに下回ることがあります。最低賃金は毎年上がるので、去年は足りていた金額が、今年は足りないということも起こります。
なお、外注で請け負ってもらっている一人親方は「労働者」ではないので、最低賃金の対象外です。ただし、契約書の名前ではなく、実際の働き方で判断される点は覚えておきましょう。
見落としが起きる3つの原因

原因1:日給・月給を1時間あたりに直していない
最低賃金は「1時間あたりいくら」で決まっています。比べ方は、厚生労働省が給与の形ごとに示しています。
| 給与の形 | 1時間あたりの出し方 |
|---|---|
| 時給 | 時給をそのまま比べる |
| 日給 | 日給 ÷ 1日の所定労働時間 |
| 月給 | 月給 ÷ 1か月の平均所定労働時間 |
| 出来高払い | 支払った総額 ÷ 働いた総時間 |
月給の「1か月の平均所定労働時間」は、年間の所定労働日数 × 1日の所定労働時間 ÷ 12で出します。月ごとの出勤日数で割るのではない点に気をつけましょう。
原因2:手当を含めた総支給額で比べている
最低賃金と比べる金額からは、次のものを外します。
- 通勤手当・家族手当・精皆勤手当
- 残業・休日出勤・深夜の割増賃金
- 賞与など、1か月を超える期間ごとに払うもの
- 結婚手当など、臨時に払うもの
給与明細の一番下にある総支給額で比べると、通勤手当や残業代の分だけ高く見えてしまいます。最低賃金と比べるのは「総支給額」ではなく「毎月決まって払う基本の部分」です。上の一覧にない手当で、含めてよいか迷うものは、労働基準監督署に確認すると確実です。
原因3:締め日の途中で切り替わることを忘れている
新しい最低賃金は、発効日以降に働いた時間から適用されます。給料を払う日ではありません。
たとえば東京で20日締めの会社なら、9月21日〜10月20日の給料のうち、9月21日〜30日の分はこれまでの1,226円、10月1日〜20日の分は1,280円が基準です。「11月の給料から上げればいい」と考えていると、10月1日からの分が足りなくなります。

\ 日給・月給・手当が混ざる給与計算の基本 /
建設業の給与計算の基本を読む日給・月給の人の確かめ方(架空の会社の例)
東京の会社を例に、実際に計算してみます。説明のための架空の例です。
日給の作業員Aさん
- 日給10,000円・1日の所定労働時間は8時間
- 10,000円 ÷ 8時間 = 1,250円
- 東京の1,280円に30円足りない
Aさんの日給は、10月1日以降の分から10,240円以上にする必要があります。去年までの東京(1,226円)なら1日9,808円で足りていたので、「去年は大丈夫だった日給」がそのまま不足になる典型的な例です。
月給の事務員Bさん
- 基本給205,000円+通勤手当15,000円+家族手当10,000円=総支給230,000円
- 年間の所定労働日数250日・1日8時間 → 月平均の所定労働時間は 250 × 8 ÷ 12 ≒ 166.7時間
- 総支給で割ると 230,000円 ÷ 166.7時間 ≒ 1,380円(足りているように見える)
- 正しくは基本給だけで 205,000円 ÷ 166.7時間 ≒ 1,230円(50円足りない)
総支給で計算すると1,380円で「問題なし」に見えます。ところが、通勤手当と家族手当を外すと1,230円です。去年の東京(1,226円)には足りていましたが、今年の1,280円は下回ります。Bさんの場合、計算に入れてよい部分を月213,334円以上にする必要があります。


今週中にやっておきたい5つの確認
名簿を1本作れば、あとは1人ずつ計算するだけです。順番に進めましょう。
- 自社に関係する都道府県と発効日を確かめる。本社以外に事業所がある会社は、事業所ごとに見る
- 雇っている全員の名簿を作る。時給・日給・月給の区分と、1日・1年の所定労働時間を書き出す
- 1人ずつ1時間あたりの金額を出す。通勤手当・家族手当・精皆勤手当・残業代は外して計算する
- 足りない人の新しい金額を決める。発効日以降に働いた分から上げる
- 給与ソフトやExcelの単価を書き換える。締め日の途中で切り替わる会社は、10月分だけ日割りの扱いを決めておく
名簿には、足りていた人も消さずに残しておきます。最低賃金は来年も上がる可能性が高いので、今年の名簿がそのまま来年の確認表になります。
賃金を上げたあとに忘れやすい3つのこと
賃金を上げたら、その金額を使っている計算もまとめて見直します。見落としやすいのは次の3つです。
- 残業代の単価:時給や日給を上げると、残業代の計算に使う1時間あたりの単価も上がります。給与ソフトで単価を手入力している場合は、そちらも直します
- 社会保険の月額変更:基本給などの固定的な賃金が上がった場合、上がった給料を最初に支払った月から3か月の平均で標準報酬月額が2等級以上変わる人は、月額変更届(随時改定)の対象になります(3か月とも支払いの対象日数が17日以上あることなどが条件です)
- 工事原価の見込み:作業員さんの日給が上がれば、現場の労務費も上がります。進行中の工事の実行予算や、これから出す見積の人件費も見直しておきましょう
会社で一番低い時給を50円以上引き上げ、仕事の効率を上げる設備などを導入した場合に、その費用の一部を国が助成する「業務改善助成金」という制度もあります。ただし、申請期限はその地域の最低賃金の発効日の前日(11月30日より後に発効する地域は11月30日)までで、賃上げも発効日の前日までに済ませる必要があります。10月1日に発効した東京などでは、2026年度分の期限はすでに過ぎています。発効日が遅い県の会社は、厚生労働省のページで最新の要件を確かめてみてください。

まとめ:最低賃金の確認は「1時間あたり」に直すところから
最低賃金の改定は、時給の人だけの話ではありません。日給・月給の人も1時間あたりに直し、手当を外して比べることで、はじめて足りているかどうかがわかります。
そして、新しい金額は発効日以降に働いた分からです。「次の給料日までに」ではなく「発効日から」で考えるのが、10月の給与計算のいちばんのポイントです。
まずは、雇っている人の名簿を1枚作るところから始めてみてください。
\ 作業員と事務員の給与を原価と経費に分ける方法 /
給与計算と労務費の仕訳を読む


