
🔍 先に結論
- 法人は原則として協会けんぽなどの健康保険に入ります。ただし年金事務所で「健康保険の適用除外」の承認を受けると、代わりに建設国保に入れます
- 適用除外が外れるのは健康保険だけです。年金は別の法律なので、法人なら厚生年金に入ります。だから「建設国保+厚生年金」になります
- 現場の登録で選ぶ「適用除外」は未加入という意味ではありません。「国に認められて、協会けんぽの代わりに建設国保に入っている」という意味です
- 聞かれたときは「適用除外の承認を受けて建設国保に入っています。年金は厚生年金です」と答えれば伝わります
建設国保とは?協会けんぽとの違いを表で比べる
建設国保は、建設業で働く人が集まってつくった健康保険です。正式には「国民健康保険組合」といいます。市区町村の国民健康保険とは別のものです。
東京土建国保の場合、母体は「東京土建一般労働組合」という労働組合です。この労働組合の組合員であることが、国保に入る前提になっています。組合費と国保の保険料は別々に払います。

協会けんぽとの主な違いは、次のとおりです。
| くらべる点 | 協会けんぽ | 建設国保(東京土建国保) |
|---|---|---|
| 入る条件 | 会社に雇われていれば原則加入 | 労働組合の組合員であること |
| 保険料の決まり方 | 給料に比例(標準報酬月額×料率) | 区分ごとの定額(給料に比例しない) |
| 会社の負担 | 会社と本人で半分ずつ | 半分ずつ払う仕組みはない |
| 家族の扱い | 扶養に入れば家族の保険料はかからない | 扶養という考え方がない。家族も1人ずつ加入して保険料がかかる |
| 病気で休んだとき | 傷病手当金がある | 給付の一覧に傷病手当金はない(入院したときの給付金など、組合独自の給付がある) |
保険料の金額は、組合が年度ごとに決めます。最新の金額は東京土建国保の公式サイトで確かめてください。
会社が保険料の一部を補助するかどうかは、会社ごとの判断です。補助した分の税金の扱いは、顧問の税理士さんに確認しておくと安心です。

建設国保がわかりにくい3つの理由
わかりにくさの正体は、「普通の会社のルール」と「例外のルール」が混ざっていることです。とくに次の3つが、話をややこしくしています。
理由1:法人なのに、協会けんぽに入っていない
法人の会社は、役員報酬を受けている社長1人だけでも、健康保険と厚生年金に入るのが原則です。ふつうは「法人=協会けんぽか健保組合」と覚えます。建設国保の会社はこの原則から外れて見えるので、「本当に大丈夫?」と思われがちです。
理由2:健康保険と年金がバラバラになっている
協会けんぽの会社では、健康保険と厚生年金がいつもセットで動きます。入社の届出も、算定基礎届も、1枚でまとめて出します。建設国保の会社は、健康保険が組合、年金が年金事務所と、窓口が2つに分かれるのが特徴です。
理由3:「適用除外」という言葉が、未加入に聞こえる
「除外」と聞くと、「入っていない」「対象外」という印象を受けます。実際は反対で、国に認めてもらったうえで、別の健康保険にきちんと入っているという意味です。言葉の印象と中身がずれているので、説明がむずかしくなります。
法人なのに建設国保に入れるのはなぜ?「適用除外承認」のしくみ
答えは、健康保険法に「承認を受けた人は健康保険に入らなくてよい」という例外があるからです。根拠は健康保険法第3条第1項第8号です。この承認のことを「健康保険被保険者適用除外承認」といいます。
昭和59年・60年の法改正で、従業員5人未満の小さな法人も健康保険と厚生年金の対象になりました(当時の健康保険は「政府管掌健康保険」、いまの協会けんぽです)。このとき国は通知で、もともと建設国保などに入っていた人は、申請があれば健康保険から外れることを承認してよい、と整理しました。いまの適用除外承認は、この流れを引き継いでいます。

承認を受けられる4つのケース
日本年金機構の案内では、次のどれかに当たる人が申請できます。
- 建設国保の組合員を雇っている事業所が、法人になるなどして健康保険の対象になったとき、その時点で組合員だった人
- 建設国保の組合員が、自分で法人をつくったときの本人
- すでに承認を受けている事業所に、新しく雇われた人
- 建設国保の組合員が、健康保険の対象の事業所に勤めたときの本人
どのケースも、その事実があった日から14日以内に申請します。東京土建国保では、加入の書類と一緒に「健康保険適用除外承認申請書」を用意します。
4つとも「もともと組合員である」か「すでに承認を受けた事業所に入る」が前提です。協会けんぽに入っている会社や人が、あとから自由に建設国保へ乗り換える道は、基本的にありません。検討するときは、組合と年金事務所に先に相談しましょう。

なぜ年金だけ厚生年金なの?
健康保険と厚生年金は、もともと別々の法律で決まっているからです。適用除外の承認は健康保険法の話なので、外れるのは健康保険だけです。
年金のほうは厚生年金保険法で決まっていて、法人の事業所で働く70歳未満の人は厚生年金に入ります(パートなど短い時間で働く人は、働く時間などの条件で決まります)。こちらには建設国保のような例外がありません。その結果、「健康保険は建設国保、年金は厚生年金」という組み合わせになります。
この組み合わせは、実務にも表れます。私の会社に年金事務所から届く「標準報酬決定通知書」は、健康保険の欄が「*」になっています。建設国保の保険料は定額なので、標準報酬月額を使いません。算定基礎届や月額変更届の結果で保険料が変わるのは、厚生年金だけです。
ただし、算定基礎届が建設国保と無関係というわけではありません。東京土建国保は事業主向けの案内で、組合員の資格を確かめるために、毎年算定基礎届の写しを出すよう求めています。3年に1回、建設業の仕事をしていることがわかる書類の提出も求めています。
\ 建設国保の会社が通知書で見るのは厚生年金の欄だけ /
算定基礎のあとの給与明細の直し方を読む現場の登録で「適用除外」を選ぶ理由
ここまでわかると、登録の「適用除外」の意味が見えてきます。「適用除外」は、承認を受けて協会けんぽの代わりに建設国保に入っている、という印です。
国土交通省も「適切な保険」と認めている
国土交通省は、建設業の社会保険の加入について指導の方針(ガイドライン)を出しています。法人で働く常用の作業員なら、健康保険は次のどれかに入っていれば「適切」とされています。
- 協会けんぽ
- 健康保険組合
- 適用除外の承認を受けた国民健康保険組合(建設国保など)
年金はどの場合も厚生年金です。法人の作業員なのに、健康保険が市区町村の国民健康保険になっていたり、年金が国民年金になっていたりすると、指導の対象になります。
「有」でも「空欄」でもなく「適用除外」を選ぶわけ
建設キャリアアップシステム(CCUS)の手引きでは、建設国保の人は健康保険を「有」ではなく「適用除外」にします。そのうえで「国民健康保険組合」にもチェックを入れ、適用除外の理由は「けんぽ適用除外承認済」を選びます。保険者番号と名称を書き、保険証などの写しを付けるのが決まりです。写しは、記号・番号、保険者番号、QRコードを隠してから出しましょう。
空欄や「―」にしないのは、「承認を受けた適用除外」と「そもそも対象外」の区別がつかなくなるからです。グリーンサイトなど他の登録サイトでも、入力のしかたは元請の案内を確かめましょう。
紙の作業員名簿では、健康保険の欄に「建設国保」などの保険の名前を書くのが基本です。付ける書類や書き方は元請ごとに違うことがあるので、現場の指示に合わせましょう。

聞かれたときに1分で答える方法と、そろえておく書類
説明は「承認」「建設国保」「厚生年金」の3語で足ります。元請の担当者や新しく入った人に聞かれたら、次のように答えてみてください。

口で説明するより早いのが、書類を見せることです。次の3つを1つのフォルダにまとめておくと、登録のたびに探さずに済みます。
- 建設国保の保険証などの写し(記号・番号・保険者番号・QRコードは隠す)
- 適用除外承認の控え(申請書の控えや承認の通知)
- 厚生年金に入っていることがわかる書類(標準報酬決定通知書の写し〈整理番号・基礎年金番号は隠す〉、保険料の領収証書など)
新しい人が入ったときは、入社の手続きの一覧に「組合への加入」と「承認の申請(14日以内)」を足しておきましょう。2つの窓口に分かれていても、一覧が1枚なら抜けません。
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まとめ:「適用除外」は、きちんと入っている証拠
建設国保+厚生年金の仕組みは、次の流れで覚えると整理できます。
- 法人は原則、協会けんぽなどの健康保険に入る
- 年金事務所で適用除外の承認を受けると、代わりに建設国保に入れる
- 承認で外れるのは健康保険だけ。年金は厚生年金
- だから現場の登録では「適用除外」を選ぶ
私も「複雑だからね」と言われたまま、理由を説明できずに「適用除外」を選んでいました。仕組みを順番にたどると、どれも法律にもとづいた手続きです。理由がわかれば、「適用除外」は後ろめたい言葉ではなく、きちんと入っている証拠になります。
次に登録の画面を開いたら、上の1分の説明を声に出して読んでみてください。それだけで、人に聞かれても答えられるようになります。
\ 社会保険と労働保険の全体像を、事務の目線でおさらい /
建設業の社会保険・労働保険の基礎知識を読む※この記事は2026年10月時点の公的資料(健康保険法・厚生年金保険法、日本年金機構、国土交通省、東京土建国保、建設キャリアアップシステムの手引き)をもとにしています。手続きの細かな条件は、加入している組合や年金事務所で確認してください。


