
自作した業務ツールは、必ず壊れます。作り方が悪いからではありません。会社のほうが変わっていくからです。
単価が改定される。請求書の様式が変わる。使う人が増える。そのたびに、今まで通っていた道が通らなくなります。
ただし、壊れる場所はだいたい決まっています。先に知っておけば、慌てずに直せます。
この記事は連載の3本目です。1本目で作り方、2本目で使ってもらう方法を書きました。
🔍 先に結論
- 変わる数字はプログラムの中に書かない。表に出しておけば自分で直せる
- データの入れ物だけは後から変えにくい。ここだけは最初に考える
- 直した記録を残す。同じ失敗を2回やらないための備えになる
自作ツールが壊れる4つのきっかけ

きっかけ1|数字が変わる
単価の改定、料率の変更、手数料の値上げ。一番よく起きる壊れ方です。
壊れるといっても、動かなくなるわけではありません。古い数字のまま、何ごともなく動き続けます。こちらのほうが厄介です。
きっかけ2|書類の様式が変わる
取引先が請求書の形を変える。社内の見積書に列が1つ増える。それだけで、読み取りが止まります。
私が実際に困ったのは、紙をスキャンした請求書でした。見た目は同じPDFでも、中に文字のデータが入っていません。人の目には読めても、ツールには真っ白な画像にしか見えないのです。
きっかけ3|使う人や機能が増える
これで、画面そのものが出なくなることがあります。
機能が増えるうちに、使っているサービスの無料で使える上限を超えてしまうケースです。この場合は、有料のプランへの切り替えが必要になります。
無料で始められることと、無料のまま続けられることは違います。育てるつもりなら、いずれ費用がかかる前提で考えておいてください。
きっかけ4|自分が忘れる
3か月前の自分は他人です。なぜこう作ったのかを、驚くほどきれいに忘れます。
忘れたまま直すと、前に苦労して直した所を元に戻してしまうおそれがあります。

直し続けるための4つの備え

備え1|変わる数字は「表」に出しておく
これが最も効きます。変わる可能性のある数字を、プログラムの中に書かせないこと。
私の見積単価ツールは、単価を一覧表のシートに持っています。単価が改定されたら、そのシートの金額を書き換えるだけ。プログラムは触りません。
新しい品目が増えたときも、表に1行足すだけで対応できます。AIに頼む必要すらありません。
作るときに、こう伝えてください。「あとで変わりそうな数字は、私が直せるように表に出しておいて」。この一言で、その後の手間がまるごと変わります。
備え2|あとから変えにくい所を知っておく
ツールの中で、直しやすい所と直しにくい所があります。
- 直しやすい:画面の見た目、計算の中身、入力できる項目
- 直しにくい:データをためておく入れ物の形
すでにデータが入っていて、他のデータからも参照されている入れ物は、後から作り直せないことがあります。私はこれで、当初の予定を変更しました。
だから最初に、「この情報は1人につき1つか、何個も持つのか」だけは考えてください。ここを取り違えると、後戻りが一番つらくなります。
逆にいえば、それ以外は後から変えられます。画面の配置や文言に悩んで手が止まるくらいなら、とりあえず作って動かしたほうが早いです。
備え3|直した記録を残す
私は失敗を書き留めるファイルを1つ持っています。書くのは4つだけです。
- 何をしたか
- 何が起きたか
- 原因は何だったか
- 次はどうするか
1件3行で十分です。これを作業の前に読み返すだけで、同じ失敗の再発がはっきり減りました。
もうひとつ、直す前に元のファイルを必ずコピーして残すこと。戻せる状態を作ってから手を付ければ、失敗しても被害はゼロです。
備え4|お金のかかる部分を減らす
AIに書類を読ませる機能は便利ですが、読ませるたびに実費がかかります。
私は途中で見直しました。書き方が決まっているものは、AIを使わない作りに変えたのです。「この行は現場名」「この行は品名と数量」と形が決まっているなら、AIに考えてもらう必要はありません。
一方、紙をスキャンした請求書だけはAIが必要でした。文字データがないので、画像から読み取るしかありません。ここは割り切って、費用を払って使っています。月に数回なので、金額は小さく収まっています。
全部AIに任せない。決まりきった処理と、判断が要る処理を分けると、維持費はぐっと下がります。
壊れたときのAIへの伝え方

「動きません」では直りません。伝えるのは次の3つです。
- 何をしたか(どのボタンを押し、どのファイルを選んだか)
- 何が起きたか(エラーの文はそのまま写す。要約しない)
- 本来どうなるはずか(正しい結果を具体的に)
とくに2番です。エラーの文を自分の言葉に直すと、手がかりが消えます。意味が分からなくても、そのまま貼り付けてください。
3番も忘れずに。「この行にも単価が入るはずです」と正解を示せば、原因を絞り込んでもらえます。

よくある壊れ方と、最初に見る場所

原因の見当がつくと、直すまでの時間が変わります。私がよく遭遇する順に並べます。
| 起きたこと | まず疑う場所 |
|---|---|
| 一部の行だけ処理されない | その行の書き方が他と違う(空白・全角半角・略称) |
| 途中で止まっている | 表の途中に空行がある、行が非表示になっている |
| 金額が古いまま | 単価の表が更新されていない |
| 特定の人だけ使えない | その人の登録漏れ、または権限の設定 |
| 昨日まで動いていたのに全部動かない | 置き場所の設定や上限。自分が触っていない所 |
とくに1行目は頻出です。処理されない行が「1件だけ」なら、ツールではなくその行を疑ってください。全部動かないならツール側、一部だけならデータ側。この切り分けだけで、無駄な調査がかなり減ります。
最後の行も覚えておいてください。自分が何も触っていないのに壊れることがあります。使っているサービス側の変更や、上限に達したことが原因です。この場合、プログラムをいくら見ても原因は見つかりません。
直したあとに必ずやること
手作業の結果と突き合わせてください。直った気がする、で本番に戻すのが一番危険です。
私は直すたびに、過去に手で作った書類と同じ結果になるかを確かめています。1円でも違えば、まだ直っていません。
ここを省くと、合っているように見えて一部しか処理されていないという壊れ方を見逃します。金額が絡む道具では、これが一番怖い失敗です。
維持にかかる手間の実感
正直に書きます。手間はゼロになりません。
作ったあとも、気づいたところを直し続けています。ただ、直すのは使っていて困った所だけです。困っていないなら放っておいて構いません。
外注していたら、この「ちょっと直したい」を全部あきらめることになります。自分で直せることそのものが、自作の一番の価値だと思っています。
\制度改正に追われたくない所は市販ソフトに任せる/
弥生会計で経理を効率化する方法を見るまとめ
- 壊れるきっかけは数字の変更・様式の変更・規模の拡大・自分の物忘れの4つ
- 変わる数字は表に出しておく。改定は表を直すだけで終わる
- データの入れ物だけは後から変えにくい。最初に考えるのはここだけでいい
- 直す前に元のファイルを残す。直したら手作業と突き合わせる
- 決まりきった処理はAIを使わない作りにすると、維持費が下がる
壊れるのは前提です。壊れたときに自分で直せる形にしておくことが、作り方そのものより大事だと感じています。
連載の最終回はセキュリティです。会社のデータを扱う以上、ここだけは自己流で済ませてはいけません。やってはいけないことを5つに絞って、【要注意】自作ツールで会社のデータを守る5つの鉄則にまとめました。
以上、建設業7年目のおけいでした!


