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月末が近づくと、通帳の残高を何回も見てしまう。そんな経験はありませんか?
工事は動いているし、利益も出ているはずです。それなのに、支払日の前だけは毎回ヒヤヒヤする。実はこれ、会社が赤字だからではなく、「払う日」と「もらう日」がズレているだけかもしれません。

この記事は「資金繰りとは何か」という一般論ではなく、自社が何日分・いくら立て替えているかを実際に計算する作業に絞って書きます。
🔍 先に結論
- 月末が苦しいのは、払う日が先・もらう日が後という支払サイトのズレが原因
- 締め日と支払日を日付で並べると立替日数がわかる(うちの実例では最大31日間)
- 3か月先まで日付順に並べて残高の「底」を見つけ、危なければその2か月前に動く
なぜ月末の支払いが苦しくなるのか

原因は、支払サイト(締め日から実際にお金が動く日までの期間)のズレです。
うちの会社を例にします。外注さんや材料屋さんへ払う条件は「月末締めの翌月末払い」。8月分の請求は、9月30日にまとめて払います。
一方で、元請けからの入金条件はバラバラです。実際にあるのがこの2つ。
- 元請A:15日締めの翌月末払い
- 元請B:月末締めの翌々月5日払い
どちらも、8月に施工した分のお金は9月30日より後に入ってきます。つまり払うほうが先で、もらうほうが後。この差の期間は、自社のお金で工事を立て替えている状態です。
苦しさの正体は赤字ではなく、お金が動く「順番」です。この立替が積み重なると、利益が出ていても手元のお金が尽きます。いわゆる黒字倒産ですね。仕組みの全体像は建設業の資金繰り悪化で黒字倒産を防ぐ方法にまとめています。
自社が何日分立て替えているかを計算してみる

8月に施工した工事について、お金の動きを日付に落としてみます。うちの実際の条件です。
| 日付 | 出入り | 内容 |
|---|---|---|
| 9月10日 | 出る | 職人さんの給料(月末締めの翌月10日払いの場合) |
| 9月30日 | 出る | 外注費・材料費(8月末締めの翌月末払い) |
| 10月5日 | 入る | 元請B(8月末締めの翌々月5日払い) |
| 10月31日 | 入る | 元請A(8月16日〜31日施工分=9月15日締めの翌月末払い) |
元請Bの分は、9月30日に払って10月5日に入金。5日間の立替です。これはまだ軽いほうでした。
問題は元請Aです。8月16日〜31日に施工した分は、締めが9月15日に回ります。入金は10月31日。こちらの支払いは9月30日に済ませているので、31日間の立替になります。
しかも職人さんの給料は「月末締めの翌月10日払い」のような早い条件が多く、外注費・材料費の支払日より20日も早く出ていきます。締めをまたいだ8月後半の施工分は、最大31日間も自社の財布で立て替えているわけです。月末が苦しい正体はこれでした。
ちなみに、締め日を過ぎてまだ払っていない外注費・材料費は、帳簿では「工事未払金」として扱います。仕訳が気になる方は工事未払金とはをどうぞ。

3か月先まで日付で並べる「先読み」のやり方

立替日数がわかったら、次は先読みです。私が毎月やっている手順は5つ。
- 元請けごとに「締め日」と「支払日」を一覧にする。口頭で聞いただけの条件は、注文書や基本契約書で確認する
- 自社が払う側の条件(外注・材料・給料・社会保険・税金)も同じ表に並べる
- 3か月先まで、日付順に「入る」「出る」を並べる(月単位ではなく日付単位で)
- 各日の残高を積み上げて、いちばん残高が低くなる日=「底」を見つける
- 底がマイナス、または手元に残したい金額を割り込むなら、その2か月前に動く
ポイントは3の「日付単位」です。月合計だと黒字に見えても、月の途中で残高が尽きることがあるからです。数字を単純にした例で見てみましょう。
| 日付 | 出入り | 金額 | 残高 |
|---|---|---|---|
| 9月1日 | 繰越 | ― | 500万円 |
| 9月10日 | 出る(労務費) | 150万円 | 350万円 |
| 9月30日 | 出る(外注費・材料費) | 300万円 | 50万円 |
| 10月5日 | 入る(元請B) | 280万円 | 330万円 |
| 10月31日 | 入る(元請A) | 350万円 | 680万円 |
この例の底は、9月30日の50万円です。月単位の表なら9月も10月も黒字に見えます。でも残高50万円は、固定費が月50万円を超える会社なら危険水域です。
手元に残したい金額の目安は、私の感覚では「固定費1か月分」です。底がこのラインを割り込むなら対処が必要です。動くのは底の直前ではなく2か月前。融資は申込から実行まで時間がかかるからです。
この作業でいちばん大変なのは、過去の通帳から日付と金額を拾う部分です。銀行明細を自動で取り込める会計ソフトを使うと、入出金の実績が勝手に貯まっていくので、先読みの土台づくりがぐっとラクになります。
ソフト選びで迷ったら、建設業向け会計ソフト比較も参考にしてください。
足りない月が見えたら、何をどの順番で考えるか

結論から言うと、①支払条件の交渉 → ②融資 → ③ファクタリングの順です。コストが安い順、と覚えてください。
①支払条件の交渉は、お金がかからない唯一の方法です。次の工事の契約時に「締め日はそのままで、支払日を早められませんか」と相談します。付き合いの長い元請けがいる会社に向いています。注意点は、今月の資金には間に合わないこと。中長期の対策と考えましょう。
②融資は、底が2か月以上先に見えている場合の本命です。私もこの方法で何度も乗り切ってきました。注意点は時間です。申込から実行まで1か月以上かかることも珍しくありません。だから「2か月前に動く」のです。借りたあとの処理は借入金・融資の仕訳にまとめています。
③ファクタリングは、請求済みの売掛金(元請けへ請求した工事代金)を買い取ってもらい、入金日より早く現金化するサービスです。スピードは速いですが、その分コストがかかります。手数料は業者と条件によって幅が大きいので、使うなら必ず複数社の見積もりを取って比べてください。位置づけは「融資では間に合わないときの最後の札」。毎月使う前提にすると、手数料で利益が削られていきます。
私の場合も、先読みで底が見えたら早めに融資を申し込み、それでも間に合わない場面でだけファクタリングを検討する、という順番で今も回しています。
そもそも支払条件は交渉していい
「元請けに条件の話なんてできない…」と感じるかもしれません。でも、下請代金の支払いには法律で線が引かれています。交渉はわがままではなく、正当な話し合いです。
ここで1つ大事な注意点があります。よく聞く下請法(2026年1月1日施行の改正で「中小受託取引適正化法」に名前が変わりました)の「60日以内」というルールは、建設工事の請負には適用されません。建設工事の支払いを守っているのは建設業法のほうです(出典:e-Gov法令検索・中小受託取引適正化法 第2条第4項)。私も最初は勘違いしていました。
建設業法の線は、この2本です。
- 元請けが注文者(施主や上位の元請け)から工事代金を受け取った日から1か月以内に、その出来形部分に相応する下請代金を払う(建設業法第24条の3)
- 元請けが特定建設業者なら、注文者からの入金の有無にかかわらず、引渡しを申し出た日から50日以内に支払期日を定める(同法第24条の6。下請け側が資本金4,000万円以上の法人などの場合を除く)
両方かかるときは早いほうの日が期限です(出典:e-Gov法令検索・建設業法/国土交通省「建設業法令遵守ガイドライン」)。
手形で受け取っている場合も目安があります。手形期間が60日を超えると「割引を受けることが困難な手形」にあたるおそれがあるとされ、労務費に相当する部分は現金で払うよう配慮することも求められています。紙の手形・小切手そのものも、2027年3月末までに交換が廃止される方向です。
元請けを責める材料にする必要はありません。まずやることは1つだけ。注文書や基本契約書の支払条件が、この線の内側にあるかを確認することです。もし線の外なら、それは堂々と相談していい話です。
📌 あわせて読みたい
まとめ:日付で並べれば、月末は怖くなくなる
- 月末が苦しいのは支払サイトのズレ。払う日が先・もらう日が後になっている
- 締め日と支払日を日付で並べれば、立替日数を計算できる(うちは最大31日間)
- 先読みは3か月先まで日付単位で。残高の「底」を見つける
- 底が危なければ2か月前に、交渉→融資→ファクタリングの順で動く
- 支払条件は建設業法で線が引かれている。入金から1か月以内/引渡し申出から50日以内かをまず確認
難しい表計算はいりません。今日の帰りにでも、元請けごとの締め日と支払日を1枚に書き出してみてください。それだけで、来月のお金の景色が変わって見えるはずです。

先読みを毎月続けるなら、入出金の記録は自動化してしまうのがおすすめです。手入力ゼロで実績が貯まれば、来月からの先読みは「並べるだけ」になります。
以上、建設業7年目のおけいでした!


