
🔍 先に結論
- 新しい標準報酬月額は9月分の保険料から。前月分を翌月の給料から引く会社なら、10月支給の給料から控除額が変わります
- 修正漏れを防ぐコツは、前年の通知書と全員分を1行ずつ並べること。「変わらなかった人」も一覧に残します
- 厚生年金には上限(2026年9月時点で65万円)があるので、厚生年金の欄だけ見ると健康保険の変更を見落とすことがあります
- 大きく上がった人・下がった人は、理由を確かめてから本人へ知らせましょう
標準報酬決定通知書が届いたら、まず「いつの給料から変えるか」を決める
毎年7月に出す算定基礎届をもとに、年金事務所が1人ずつ標準報酬月額を決め直します。標準報酬月額とは、社会保険料を計算するときの基準になる月額のことです。これを「定時決定」といいます。
決まった金額は、その年の9月分から翌年8月分までの保険料に使います。

迷いやすいのは、「9月分」と「9月に払う給料」が別物だという点です。社会保険料は、前月分を当月の給料から引くのが原則です。つまり9月分の保険料は、10月に支給する給料から引きます。
| 会社の引き方 | 新しい金額で引き始める給料 |
|---|---|
| 前月分を翌月の給料から引く(原則) | 10月支給の給料から |
| 当月分をその月の給料から引いている | 9月支給の給料から |
自社がどちらなのかは、去年の9月と10月の給料明細を見比べるか、給与ソフトの「社会保険料の徴収月」の設定を見ればわかります。

修正漏れが起きる3つの原因
修正漏れは、計算ミスより「見落とし」から起きます。よくある原因は次の3つです。
原因1:通知書を「変わった人のリスト」だと思ってしまう
決定通知書には、金額が変わらなかった人も載っています。前回の金額は書かれていないので、通知書だけ見ても誰が変わったのかはわかりません。
さらに、通知書が1回で全員分届くとは限りません。「処理が完了した方の分から順次発送」と書かれて、一部の人の分だけ別の紙で届くこともあります。
原因2:厚生年金の欄だけを見てしまう
通知書には、健康保険と厚生年金の2つの金額が並んでいます。この2つは、いつも同じとは限りません。
厚生年金の標準報酬月額には上限があり、2026年9月時点では65万円です。2027年9月からは段階的に引き上げられる予定です。一方、健康保険はもっと上の等級まであります。そのため、給料の高い人は「厚生年金は65万円のまま、健康保険だけ上がった」ということが起こります。
なお、健康保険組合や建設国保などに入っている会社では、健康保険の欄が「*」で表示されることがあります。私の会社は建設国保なので、通知書の健康保険の欄は「*」でした。建設国保の保険料は組合ごとに決まり(定額の組合が多いです)、標準報酬月額は使いません。この場合に比べるのは厚生年金だけです。健康保険組合の場合は、組合から届く別の通知で健康保険の金額を確かめます。
原因3:通知書に載っていない人を確かめない
7〜9月に月額変更(随時改定)で金額が変わる人は、9月の定時決定の対象から外れます。6月1日以降に入社した人も対象外です。
こうした人は通知書に名前がないので、「載っていない=変更なし」と決めつけるのが一番危険です。月額変更の通知書など、別の書類で金額を確かめましょう。

修正漏れを防ぐ一覧表の作り方(架空の会社の例)

私がやったのは、前年の通知書と今年の通知書を並べて、社会保険に入っている全員を1行ずつ書き出すことです。下の表は、説明のために作った架空の会社の例です。
| 社員 | 前回 | 今回 | 給料明細の修正 |
|---|---|---|---|
| Aさん | 26万円 | 28万円 | 必要(上がる) |
| Bさん | 41万円 | 38万円 | 必要(下がる) |
| Cさん | 30万円 | 30万円 | 不要 |
| Dさん | 健保71万円 厚年65万円 | 健保75万円 厚年65万円 | 健康保険だけ必要 |
| Eさん | 24万円 | 通知書に載っていない | 月額変更の通知で確認 |
ポイントは、「不要」の人も表から消さないことです。全員が並んでいれば、漏れた人がひと目でわかります。Dさんのように欄によって結果が違う人も、2つの金額を分けて書いておけば見落としません。
給料明細でいくら変わるかも、ざっくり見ておきます。厚生年金の保険料率は18.3%で、本人と会社が半分ずつ負担します。Aさんの場合はこうなります。
- 前回:26万円 × 9.15% = 23,790円
- 今回:28万円 × 9.15% = 25,620円
- 給料から引く額は月1,830円増える
健康保険料は、都道府県や加入している健康保険によって料率が違います。自社の保険料額表で、新しい等級の金額を確認しましょう。
\ 社会保険料の控除の基本と、給与計算の月次の流れ /
建設業の給与計算の基本を読む給料明細を直す7つの手順
一覧表ができたら、あとは順番に進めるだけです。
- 通知書と前年の通知書を並べ、全員分の一覧表を作る(前回・今回・修正の要否)
- 通知書に載っていない人を探す。社会保険に入っている人の名簿と突き合わせ、月額変更の人・6月1日以降に入社した人を確かめる
- 新しい金額で引き始める給料を決める(前月分を翌月に引く会社なら10月支給分)
- 給与ソフトやExcelの標準報酬月額を書き換える。健康保険と厚生年金の両方の欄を直す(建設国保・健保組合の会社は、年金事務所の通知書では厚生年金の欄だけ)
- 保険料額表で新しい控除額を確かめる。ソフトが出した金額と、額表の金額が合っているかを見る
- 10月支給の給料明細で、前月との差を検算する。差額の理由が「標準報酬が変わったから」だけになっていればOK
- 本人へ新しい標準報酬月額を知らせる。決定の内容を被保険者へ通知することは、事業主の義務として法律で決まっています
手順6の答え合わせに使えるのが、10月20日ごろに届く保険料の納入告知書です(口座振替の会社は「納入告知額・領収済額通知書」)。ここには9月分の保険料の合計が載っています。会社負担・本人負担に、会社だけが払う子ども・子育て拠出金を足した額です。前月の告知書からの増減と、10月の給料で引いた本人負担の増減を比べます。向きがそろっていれば、直し忘れは見つけやすくなります。

大きく上がった人・下がった人は理由を確かめる
一覧表を作ると、前回から大きく動いた人が目に入ります。金額が大きく動いた人ほど、届け出の数字が合っていたかを確かめる価値があります。
理由がはっきりしていれば問題ありません。たとえば次のような場合です。
- 4〜6月に残業や現場の手当が多かった(建設業ではよくあります)
- 4〜6月は現場が少なく、残業が減った
- 役員報酬を見直した
- 通勤手当が変わった(通勤手当も報酬に含まれます)
思い当たる理由がないのに大きく変わっていたら、算定基礎届の控えと、4〜6月の給与台帳を見直しましょう。数字の写し間違いが見つかったら、年金事務所に相談します。
本人へ知らせるときも、理由がわかっていれば説明しやすくなります。上がった人には「4〜6月の残業が多かったため」と一言添えるだけで、手取りが減った理由に納得してもらいやすくなります。
9月以外にも保険料が変わるタイミング
標準報酬月額が変わらなくても、給料から引く保険料が変わる月があります。年間の予定に入れておくと、確認の漏れが減ります。
- 3月分から:協会けんぽの健康保険料率・介護保険料率が見直される(毎年)
- 40歳になった月から:介護保険料が加わる(誕生日の前日が属する月から。1日生まれの人は前月から)
- 65歳になった月から:介護保険料を給料から引かなくなる
- 2026年4月分から:子ども・子育て支援金が健康保険料と一緒に徴収されるようになった(翌月徴収なら5月支給の給料から)
- 随時:固定給が大きく変わって月額変更に当たったとき
まとめ:通知書は「全員を並べる」まで終わらない
標準報酬決定通知書は、届いた紙をファイルに綴じても仕事は終わりません。前年の分と並べて全員の一覧表を作り、10月支給の給料明細で検算するまでが1セットです。
私自身、今年は7人分を1行ずつ並べて、5人が修正、2人が修正なしと確かめました。一覧表は来年もそのまま使えます。今年の表を残しておけば、来年の自分が一番助かります。
通知書が手元にある今のうちに、一覧表の1行目を書き始めてみてください。
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