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🔍 先に結論
- 未成工事受入金(みせいこうじうけいれきん)は、工事が完成する前に受け取った工事代金のこと。一般の簿記の「前受金」にあたる建設業の科目で、着手金・中間金・出来高の入金はこれで処理する
- 受け取った時点では売上にしない。完成・引き渡しのときに完成工事高へ振り替え、消費税もそのときに計上する
- 「前受金」を使うのは、設計料や物品販売など工事以外の前払いだけ
- キャンセルで返金するときの仕訳、インボイス対応、工事ごとの管理方法もまとめて解説
この記事でわかること
- 着手金・中間金と「未成工事受入金」「前受金」の関係
- 受け取ったとき・引き渡したとき・残金が入金されたときの仕訳
- 消費税を計上するタイミングとインボイスの注意点
- 工事がキャンセルになったときの返金の仕訳
未成工事受入金とは?着手金・中間金を受け取ったときの科目

着手金は、工事の請負契約を結んだあと、着工前または着工時に発注者から受け取る代金の一部です。
工事の途中で受け取るのが中間金。
どちらも「工事が終わる前に受け取った工事代金」なので、未成工事受入金という建設業の科目で処理します。
| 受け取るタイミング | 呼び方 | 使う科目 |
|---|---|---|
| 契約後、着工前・着工時 | 着手金 | 未成工事受入金 |
| 工事の途中 | 中間金 | 未成工事受入金 |
| 完成・引き渡し | 残金(完成金) | 完成工事高へ振り替え(未入金なら完成工事未収入金) |
一般の簿記では、商品やサービスを渡す前に受け取ったお金を「前受金」で処理します。
建設業ではこれにあたる科目が「未成工事受入金」です。
未成工事支出金との違い
名前が似ていて取り違えやすいのが「未成工事支出金」です。受け取ったお金か、払ったお金かで分かれます。
| 科目 | 中身 | 決算書での区分 |
|---|---|---|
| 未成工事受入金 | 完成前に受け取った工事代金 | 負債(流動負債) |
| 未成工事支出金 | 完成前の工事にかかった材料費・外注費など | 資産(流動資産) |
引き渡しのときに、受入金は完成工事高へ、支出金は完成工事原価へ振り替えます。支出金の振り替えは未成工事支出金とは?仕訳例と完成時・決算時の振替で解説しています。

なぜ受け取った時点では売上にならないのか
中小の建設会社の多くは、工事が完成して引き渡した時点で売上を計上する「工事完成基準」で処理しています。
着手金を受け取っても、工事はまだ終わっていません。
そのため、受け取った時点では売上になりません。
未成工事受入金は、貸借対照表の流動負債に表示されます。
「お金は先にもらったが、工事を完成させる義務がまだ残っている」という意味の負債です。

仕訳例:着手金の受け取りから引き渡しまで

ここでは、次の工事を例にします(消費税10%・税抜経理の場合)。
- 工事代金:1,000万円(税抜)+消費税100万円=税込1,100万円
- 契約後に着手金として330万円(税込)を受け取る
- 残金は770万円(税込)
① 着手金330万円を受け取ったとき
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 3,300,000円 | 未成工事受入金 | 3,300,000円 |
受け取った金額をそのまま、税込の330万円で未成工事受入金にします。
この時点では消費税(仮受消費税)を分けません。
消費税がかかるのは引き渡しのときなので、会計ソフトでもこの仕訳には消費税の税区分を付けない設定(「対象外」など)にしておきます。
② 完成・引き渡しの日に残金770万円も入金されたとき
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 未成工事受入金 | 3,300,000円 | 完成工事高 | 10,000,000円 |
| 普通預金(残金) | 7,700,000円 | 仮受消費税 | 1,000,000円 |
| 合計 | 11,000,000円 | 合計 | 11,000,000円 |
預かっていた着手金を取り崩して、工事代金の全額を完成工事高に振り替えます。
消費税100万円は、このタイミングで仮受消費税として計上します。
③ 引き渡し後に残金を請求し、翌月に入金されるとき
実務では、引き渡したあとに残金を請求して、入金は翌月以降になることが多いです。
その場合は、残金を完成工事未収入金にします。
引き渡したとき
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 未成工事受入金 | 3,300,000円 | 完成工事高 | 10,000,000円 |
| 完成工事未収入金 | 7,700,000円 | 仮受消費税 | 1,000,000円 |
| 合計 | 11,000,000円 | 合計 | 11,000,000円 |
残金が入金されたとき
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 7,700,000円 | 完成工事未収入金 | 7,700,000円 |
※税込経理の会社は、仮受消費税を分けずに完成工事高を税込の1,100万円で計上します。どちらの方式かは会社の経理方針で統一してください。
④ 元請けに出来高請求して入金されたとき
下請けの専門工事会社では、着手金より、毎月の出来高請求で工事の途中にお金を受け取ることも多いと思います。工事完成基準なら、出来高の入金も完成までは未成工事受入金に入れておき、引き渡しのときにまとめて完成工事高へ振り替えます。仕訳の形は①と同じです。
🏢 私の会社の場合
私の会社も、元請けへの請求はほとんどの現場が出来高請求です。出来高で請求した分は、工事が完成するまで売上にしません。パソコンに入れて使う弥生会計で、「前受金」という科目で処理しています。
やり方は、月末に、まだ完成していない工事の出来高分を「売上」から「前受金」へ振り替え、翌月にその振替を元に戻す方法です。こうすると、月末の数字には、完成した工事の分だけが売上として残ります。いったん戻してから入れ直すこのやり方を「洗替(あらいがえ)」といいます。
| 時期 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 月末 | 売上 200万円 | 前受金 200万円 |
| 翌月 | 前受金 200万円 | 売上 200万円 |
※金額は説明用の例です(まだ完成していない工事の出来高が200万円の場合)。
経理を始めた頃は、未収入金と前受金の違いが分からず、税理士に何度も確認していました。迷わなくなったのは、税理士にどの取引をどの科目で処理するかを教わってからです。
会計ソフトの科目名が「前受金」でも、建設業の決算書(財務諸表)では「未成工事受入金」の欄に載せることになります。これから科目を作るなら、最初から「未成工事受入金」にしておくと組み替えの手間がかかりません。
出来高請求の流れや、進行基準で出来高を売上にする場合の仕訳は、建設業の中間金・出来高払いの仕訳でくわしく解説しています。

「未成工事受入金」は、会計ソフトに最初から入っていないこともあります。
弥生会計 Nextの場合も初期設定に建設業専用の科目はありませんが、科目の追加で使えるようになります。
最初に科目を作っておけば、毎回迷わずに入力できます(体験期間などの条件は最新の公式サイトで確認してください)。
「前受金」を使うのは工事以外の前払いだけ
建設会社でも「前受金」を使う場面はあります。
それは、工事の請負ではない仕事の代金を先に受け取ったときです。
| 先に受け取ったお金 | 使う科目 |
|---|---|
| 工事請負代金の着手金・中間金 | 未成工事受入金 |
| 設計料・監理料の前払い | 前受金 |
| 資材・備品の販売代金の前払い | 前受金 |
建設業許可の申請・更新や毎年の決算変更届では、建設業法の様式で作った財務諸表を提出します。
この様式には「未成工事受入金」の欄があります。
工事の前受けを「前受金」で処理していると、書類を作るたびに組み替えが必要になり、手間とミスが増えます。

消費税は受け取ったときではなく引き渡したときに計上する
消費税法では、工事の請負に消費税がかかるのは、原則として目的物をすべて完成して引き渡した日です。
着手金・中間金を受け取っただけでは、消費税は計上しません。
| 段階 | 消費税 | 仕訳 |
|---|---|---|
| 着手金・中間金を受け取ったとき | 計上しない(税込のまま預かる) | (借)普通預金 /(貸)未成工事受入金 |
| 完成・引き渡しのとき | 工事代金全体の消費税を計上 | (借)未成工事受入金+普通預金または完成工事未収入金 /(貸)完成工事高+仮受消費税 |
| 残金が入金されたとき | なし(計上済み) | (借)普通預金 /(貸)完成工事未収入金 |
決算日をまたぐ工事は特に注意が必要です。
着手金を受け取った期に消費税を計上してしまうと、売上と消費税の期がずれてしまいます。
なお、工事の一部分ずつを引き渡す契約(部分完成)の場合は、引き渡した部分ごとに売上と消費税を計上します。

着手金の請求書・領収書とインボイス
2023年10月からのインボイス制度(適格請求書等保存方式)では、発注者が消費税の控除を受けるために、登録番号などを書いた請求書が必要になります。
着手金の段階から、次の点をそろえておくと引き渡し時の精算がスムーズです。
- 着手金の請求書・領収書にも登録番号を記載する
- 適用税率(建設工事は標準税率の10%)を明記する
- 最終の請求書には、工事代金の総額・消費税額と「着手金〇円受領済み」を書き、残金との関係がわかるようにする
どの書類をインボイスとして扱うかは、取引先と事前にすり合わせておくと安心です。
工事がキャンセルになり着手金を返すときの仕訳
先ほどの例で、着手金330万円を受け取ったあとに工事がキャンセルになった場合の仕訳です。
| 状況 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 全額を返す | 未成工事受入金 | 3,300,000円 | 普通預金 | 3,300,000円 |
| 違約金100万円を差し引いて返す | 未成工事受入金 | 3,300,000円 | 普通預金 雑収入(違約金) | 2,300,000円 1,000,000円 |
キャンセルによる違約金は、損害賠償の性質のものであれば消費税の対象外(不課税)とされるのが一般的です。
ただし、すでに終わった作業の対価として受け取る場合などは扱いが変わることがあります。
判断に迷うときは税理士に確認しましょう。

着手金について契約書で確認したい3つのポイント
着手金のトラブルは、契約書の内容と実際の受け取り方がずれているときに起きやすくなります。
契約書では次の3つを確認しておきましょう。
- 支払条件:着手金をいつまでに・いくら受け取るか
- キャンセル時の扱い:着手金を返す条件と違約金の決まり
- 中間金・残金の条件:着手金以外の支払時期と金額
着手金は、発注者の支払い能力を確かめる手段にもなります。
発注者から「着手金はなしで、完了後に一括で払いたい」と言われることもあります。
こうした条件は代金を回収できないリスクが高まるため、工事に着手する前に社長や経営陣と確認しておくと安心です。
工事ごとに未成工事受入金を管理するコツ

建設業では複数の工事が同時に進み、それぞれに着手金・中間金が入ってきます。
工事ごとに分けて管理しないと、引き渡しのときに「どの工事の受入金をいくら振り替えるか」がわからなくなります。
- 会計ソフトの補助科目などで、工事ごとに未成工事受入金を分ける
- 受け取った日・金額を工事台帳にも記録する
- 月に1回、工事ごとの残高一覧を出して、工事の進み具合と照らし合わせる
- 引き渡しの仕訳のあと、その工事の残高がゼロになっているか確認する
未成工事受入金の残高は、「これから完成する工事について、すでに受け取っているお金」の合計です。
受注済みでまだ着工していない工事と合わせて見ると、数か月先の売上と入金の見通しが立てやすくなります。
資金繰りの計画にもそのまま使えます。
私の会社でも、元請けと前受金(工事の前にもらうお金)の交渉がまとまり、翌月の資金繰りが楽になったことがあります。
上場企業などは「収益認識に関する会計基準」に注意
2021年4月以降に始まる事業年度から、上場企業や会社法上の大会社などには「収益認識に関する会計基準」が適用されています。
この基準では、一定の条件を満たす工事は、工事の進み具合(進捗度)に応じて期ごとに売上を計上します(以前の「工事進行基準」に近い考え方です)。
中小企業は、これまでどおり工事完成基準で処理している会社が多数です。
| 売上の計上方法 | 売上を計上するとき | 受け取った着手金・中間金 |
|---|---|---|
| 工事完成基準(中小企業に多い) | 完成・引き渡し時 | 引き渡しまで未成工事受入金に全額ためておく |
| 進捗度に応じて計上(収益認識基準) | 工事の進み具合に応じて期ごと | 計上した売上と相殺し、売上を超えて受け取った分だけが未成工事受入金に残る |

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まとめ:工事代金の前受けは未成工事受入金で処理
- 着手金・中間金を受け取ったとき:税込のまま未成工事受入金(負債)に計上する
- 完成・引き渡しのとき:未成工事受入金を完成工事高へ振り替え、消費税もここで計上する
- 残金:未入金なら完成工事未収入金にして、入金時に消す
- 前受金:設計料や物品販売など、工事以外の前払いだけに使う
まずは、今月受け取った着手金・中間金が工事ごとに未成工事受入金に入っているか、残高一覧で1回確かめてみてください。

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以上、おけいでした!


