経理未経験で建設会社の経理を始めたら|まず全体図

経理未経験の方へ:建設会社の経理は最初に流れの全体図を描く、という3ステップ解説のアイキャッチ 事業とお金の管理
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おけい
おけい
こんにちは、建設会社で経理・総務をしているおけいです。私は、夫が会社を設立するときに手伝いで入社しました。経理の経験はなく、資格は高校生のときに取った簿記3級だけ。社内に相談できる人もいなかったので、わからないことは自分で調べるしかありませんでした。今は経理を一人で担当して7年目です。同じように「未経験で建設会社の経理を任された」人に向けて、最初に知っておきたかったことをまとめました。

🔍 先に結論

  • 未経験者がつまずくのは、簿記よりも建設業の言葉と流れです
  • 最初に覚えるのは仕訳のルールではなく、お金と書類が会社をどう流れるかの全体図です
  • 全体図は「出来高」「元請・下請」「工事ごとの原価」「現場との連絡」の4つの言葉で読めるようになります
  • 相談相手がいないなら、聞く先を税理士・現場・取引先に分けておくと迷いが減ります

未経験でつまずくのは、簿記より「建設業の言葉と流れ」

建設会社の経理で最初に手が止まるのは、仕訳の書き方ではありません。届いた書類が「どの工事の・何のお金か」がわからないことです。

簿記3級で習うのは、商品を仕入れて売るお店の流れです。建設会社には、決まった商品も店頭もありません。1件ずつ工事を請け負い、現場ごとに材料と職人さんを手配して、工事の進み具合に合わせて請求します。

科目の名前も変わります。売上は「完成工事高」、売掛金は「完成工事未収入金」、作りかけの工事にかかったお金は「未成工事支出金」です。国土交通省が決めている建設業の勘定科目の分類では、工事の外注費や材料費の未払いは「工事未払金」と定められています。建設業の決算書では、買掛金は建設業以外の仕事(兼業)の仕入れにだけ使う科目です。

ただ、科目の対応表だけを覚えても、仕事は回りません。科目は「流れのどこにいるお金か」を表す名札だからです。流れが見えていれば、名札の意味はあとからついてきます。科目の一覧は建設業の経理の特徴の記事にまとめています。

けいりん
けいりん
科目名を丸暗記するより、「このお金はいま流れのどこにいる?」と考えるクセをつけよう!そのほうが仕訳で迷わなくなるよ^^

最初に覚えるのは、お金と書類の全体図

建設会社のお金は、「工事を受ける → 現場でお金を使う → 請求して入金される → 協力会社へ払う → 工事ごとに締める」の順に流れます。書類もこの順に会社へ届きます。

工事を受ける、お金を使う、入金される、支払う、工事ごとに締める、という建設会社のお金の流れ5段階と書類を持つ女性経理担当者

私の会社は内装下地(軽鉄・ボード)の専門工事会社で、元請けから工事を受ける側です。こうした専門工事会社の流れに当てはめると、次のようになります。

流れ届く・出す書類経理がすること
① 工事を受ける元請けとの契約の書類工事番号をつけ、工事ごとの台帳を作る
② 現場でお金を使う材料屋さん・協力会社からの請求書、現場の出面(だれが、どの工事で何時間働いたか)どの工事の材料費・外注費・労務費かを分けて入力する
③ 請求して入金される元請けへの出来高請求の書類請求した額と入金額を突き合わせる
④ 協力会社へ払う支払いの一覧締め日と支払日を決めて振り込む(私の会社は月末締め・翌月末払い)
⑤ 工事ごとに締める工事別の原価台帳、決算書工事ごとの損益を出す。期末に終わっていない工事を分ける

この図があると、知らない書類が届いても「②の請求書だから、工事を確かめて原価に入れる」と置き場所が決まります。図がないと、1枚ずつ「これは何?」から調べることになります。

⑤の先には、建設業ならではの提出物もあります。建設業の許可を持つ会社は、事業年度が終わってから4か月以内に、決算の内容を国や都道府県へ届け出ます(建設業法第11条第2項。いわゆる決算変更届)。私の会社では、これも私が作って申請しています。経理の数字が、許可の手続きにまでつながっているわけです。

全体図を読むための4つの言葉

言葉1:出来高(工事の進み具合に合わせた請求)

出来高(できだか)は、工事がどこまで進んだかを金額で表したものです。工事が終わるのを待たずに、進んだ分を毎月請求します。私の会社では、元請けへの請求はほぼすべての現場が出来高請求です。

注意したいのは、出来高で請求した金額が、そのまま売上になるとは限らないことです。完成したときに売上を立てる工事なら、完成前に受け取ったお金は「未成工事受入金」という預かりの科目に入れます。私の会社では、売上は完成したときに計上するのが基本で、決算をまたぐ大きな現場のときだけ、元請けと話し合ったうえで途中でも売上に計上しています。どちらで計上するかは会社と工事によって違うので、自分の会社のやり方を税理士に確かめてください。

\ 中間金と出来高払いの違いを、仕訳例で確認 /

建設業の中間金・出来高払いの仕訳を読む

言葉2:元請・下請(同じ会社が両方の立場になる)

元請(もとうけ)は施主から直接工事を受ける会社、下請(したうけ)はその一部を受ける会社です。専門工事会社の多くは、元請けから見れば下請、協力会社から見れば注文する側という二つの顔を持っています。

立場が変わると、書類の向きも変わります。元請けには自社が請求書を出し、協力会社からは自社に請求書が届きます。私の会社の協力会社は、約半分が一人親方(一人で仕事を請ける職人さん)です。インボイス(適格請求書)の登録をしていない人も多いので、支払いのときは登録の有無も確かめます。「この書類は、うちが出す側か、受ける側か」を最初に見分けるだけで、処理を取り違えにくくなります。

言葉3:工事ごとの原価(すべてのお金に工事番号をつける)

建設業では、会社全体の損益だけでなく、工事1件ずつの損益を出します。そのために、材料費・労務費・外注費・経費を工事ごとに分けて集めます。

私の会社では、工事番号を「元請けごとの番号+枝番」でつけています。協力会社には、請求書に現場名を書いてもらうようお願いしています。会計はパソコンに入れて使う弥生会計(デスクトップ版)、工事ごとの原価は建設原価ビルダー5で管理し、毎月この2つの数字を突き合わせています。

突き合わせをする理由は、帳簿と工事ごとの数字がずれると、決算で苦労するからです。私は入社して最初の決算で、未成工事支出金(完成していない工事にかかったお金)の残高が合わず、半日かけて帳簿を追いかけました。以前は会社全体がどんぶり勘定で、赤字に気づくのは工事が終わってからでした。今は月次の資料を翌月中旬にまとめ、工事の途中で赤字に気づけるようになっています。

せきさんくん
せきさんくん
現場名のない請求書は、その場で現場に確認だ!あとでまとめて調べると、どの工事のお金か分からなくなるぞ!

なお、ふだん使う会計ソフトの科目名と、建設業法の決算書の科目名が違う会社もあります。私の会社の弥生では、工事の外注費や材料費の未払いを「買掛金」で入力していて、建設業法の決算書を作るときに税理士が「工事未払金」に読み替えています。社内の帳簿の科目名がどうであっても、建設業法の決算書では工事の未払いは工事未払金です。入社した会社の帳簿で見慣れない使い方を見つけたら、まず税理士に「決算書ではどの科目になりますか」と聞いてみてください。

言葉4:現場との連絡(数字は経理だけでは決まらない)

建設業の経理は、机の上だけでは数字が確定しません。工事が終わった日、どこまで進んだか、倉庫に何が残っているか。これを知っているのは現場の人です。

私の会社では、決算の時期に現場へ「完工日の確認」「途中で売上を立てる工事の売上と原価の確認」「倉庫在庫の確認」を頼んでいます。引渡しの日は、作業が終わった日で判断しています。現場との連絡は、経理の仕事の一部だと考えておくと、聞くことへの遠慮が減ります。

出来高、元請・下請、工事ごとの原価、現場との連絡という建設業経理の4つの言葉と女性経理担当者

私は「現場をもっと知りたい」と思い、1級建築施工管理技士の第一次検定を、ほぼ独学で受けました。周りからは「事務には無理」と言われましたが、半年間、毎日2時間の勉強で1回目で合格しています。資格まで取らなくても、現場の言葉を少し知っておくと、現場への質問がしやすくなります。受験のいきさつは現場を知らない事務が一次合格!施工管理技士の通信講座比較に書いています。

相談できる人がいないときの進め方

家族で経営している会社や、設立して間もない会社では、経理の前任者がいないことがあります。私も、設立の手伝いで入社したので、教えてくれる先輩はいませんでした。そんなときは、質問の種類ごとに聞く先を決めておくと、一人で抱え込まずに済みます。

わからないこと聞く先
科目の使い方・売上を立てる時期・税金顧問の税理士
どの工事の請求書か・工事の進み具合・完工日現場の担当者(番頭さん)
請求書の書式・締め日・提出方法元請けの担当窓口
建設業の科目の決まり国土交通省の「勘定科目の分類」などの公的資料

求人を見て入社し、前任者や先輩がいる人は、最初に「お金と書類の流れを1枚の紙に描いてもらう」のがおすすめです。全体図の表の①〜⑤に、自分の会社の書類名を書き込むだけでも十分です。覚える順番が決まる前に全体図を持っておくと、日々の作業がどこにつながるのかが見えてきます。

じむねこ
じむねこ
調べたことはメモに残しておこう!同じことで2回迷わなくなるし、あとから入る人への引き継ぎにもなるよ^^

まとめ:仕訳より先に、流れを1枚の図にする

未経験で建設会社の経理を始めたら、次の順で考えてみてください。

  1. お金と書類の流れを「受ける → 使う → 請求・入金 → 支払う → 締める」の図にする
  2. 出来高・元請と下請・工事ごとの原価・現場との連絡の4つの言葉で、図を読めるようにする
  3. わからないことは、税理士・現場・元請けに分けて聞く

私も簿記3級だけで始めて、ひとつずつ調べながら覚えてきました。全体図があれば、知らない言葉に出会っても「流れのどこの話か」がわかります。今週のうちに、自分の会社の流れを1枚の紙に書いてみてください。書けない部分が、次に誰かに聞くことです。

建設業の科目や毎月の仕事の流れを1冊で順番に知りたい人には、私が書いたKindle本があります。建設会社の経理を任されたけれど、簿記の本に出てこない言葉で手が止まっている人に向けた実務入門です。完成工事高・工事未払金・未成工事支出金などの科目の使い分けや、請求書の処理・出来高請求・入金の消し込みといった毎日・毎月の仕事の流れを扱っています。

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以上、建設業7年目のおけいでした!

※この記事は2026年10月時点の建設業法と、国土交通省の「勘定科目の分類」をもとにしています。売上を計上する時期や科目の使い方は会社によって違うので、顧問の税理士に確認してください。