
経理の仕事には、頭を使わないのに時間だけ取られる作業があります。
私の場合は、見積書に単価を1行ずつ入れる作業でした。54行あれば、単価表を見て54回打ち込みます。1〜2時間、多い日は半日かかっていました。
その作業が、今は1時間もかかりません。自分で作ったツールに見積書を読み込ませるだけだからです。
私にプログラミングの経験はありません。今もコードは1行も書けません。
書いたのはAIです。私がしたのは、何に困っているかを日本語で伝えることだけでした。
🔍 先に結論
- プログラムが書けなくても、AIに日本語で頼めば業務ツールは作れる
- 大事なのはコードではなく「どの作業を自動化するか」を先に決めること
- 最初の1本は1日で作れる。完璧を狙わず、使いながら直していく
私が作った2つのツール

作ったものは2つあります。規模がまったく違うので、先に並べておきます。
| ① 見積単価ツール | ② 出面管理システム | |
|---|---|---|
| 形 | Excelのマクロ | スマホでも使えるWebアプリ |
| 使う人 | 自分と数名 | 社長・番頭・事務の5名 |
| できること | 見積書に単価を自動で入れる | 出面の入力、原価の集計、領収書や請求書から経理の仕訳を作る |
| かかった期間 | 初版は1日 | 5月に着手し、今も育て続けている |
①は1日で作れる小さな道具です。②は会社の業務そのものを載せた仕組みで、性格がまるで違います。
②で一番大きかったのは、出面の確認作業がなくなったことでした。誰がどの現場に何人工入ったかを突き合わせる作業が、毎月ごっそり消えました。
ただし、いきなり②のような大きいものは作れません。②も、小さな画面をひとつ作るところから始めて、少しずつ足してきました。小さく作って、動くことを確かめてから大きくする。これが唯一の順番です。

未経験でも作れるようになった理由
理由はひとつです。「作ってください」と日本語で頼めるようになったから。
以前なら、業務ツールを作るには手順がありました。やりたいことを仕様書にまとめ、業者を探し、見積を取り、数十万円を払う。直したくなったら、また依頼して待つ。
この流れでは、現場で毎日起きている小さな面倒は一生解決しません。わざわざ外注するほどではないけれど、積み上がると半日消える。そういう作業ばかりだからです。
私が使っているのは Claude Code というツールです。パソコンの中のファイルをAIに見せながら、日本語で指示を出せます。
「この見積書を開いて、この単価表と突き合わせて、単価の列を埋めてほしい」。こう伝えると、AIがプログラムを書いて、実行して、結果を見せてくれます。
私は出てきた結果を見て、「ここが違う」と言うだけ。コードを読む必要はありません。
AIで業務ツールを作る5ステップ

私が2つのツールを作るときに通った手順です。順番に意味があります。
ステップ1|自動化する作業を「1つだけ」決める
最初にやることは、AIを触ることではありません。どの作業を自動化するかを決めることです。
選ぶ基準は3つあります。
- 毎回おなじ手順でやっている作業
- 判断がほとんど要らない作業
- 間違えると後が面倒な作業
見積書の単価入力は、この3つすべてに当てはまりました。単価表を見て、同じ品名の単価を写すだけ。迷う余地はありません。それでいて、1か所間違えれば金額が全部ずれます。
逆に、相手の状況を見て判断が変わる作業は向きません。値引きの判断や、支払いを待ってもらう交渉。こういうものは人がやったほうが早いです。
ステップ2|AIには「業務の言葉」で伝える
専門用語はいりません。普段、新人に教えるときの言い方でそのまま伝えます。
ただし、ひとつだけコツがあります。「だいたいこんな感じ」で頼むと、だいたいのものができます。
たとえば「単価を入れて」だけでは足りません。私が実際に伝えたのは、こういう条件でした。
- 品名と規格と単位、この3つが合ったときだけ単価を入れる
- すでに単価が入っている行は触らない
- 数量が空っぽの行は飛ばす
- どの行に何を入れたか、あとから見られるように記録を残す
この「触らない」「飛ばす」という条件が大事です。人間なら当たり前に判断していることほど、言葉にしないと伝わりません。

ステップ3|1日で動くものを作って、すぐ仕事で使う
見積単価ツールの初版は1日でできました。完璧ではありません。読み取れない書き方がいくつもあり、入らない行も残りました。
それでも、その日のうちに本物の見積書で使いました。机の上で考えていても、何が足りないかは分かりません。
今の形になるまでにかかったのは、そこから約1か月です。使って、つまずいて、直す。その繰り返しでした。
ステップ4|違ったところを、その場で直す
ここがAIで作る一番の利点です。直したいと思った瞬間に直せます。
「この行が入っていない」と伝えれば、原因を調べて直してくれます。外注していたら、メールを書いて、見積を待って、納品を待つところです。
私は毎回、手で計算した結果とツールの結果を突き合わせました。54行の見積書で、手作業と1円も違わないと確かめてから、本番で使い始めています。
この検算だけは省かないでください。合っているように見えて、実は一部しか読んでいなかった、ということが実際に起きます。
ステップ5|元に戻せるようにしておく
自動で書き換えるツールには、必ずバックアップを取る機能を付けます。
私のツールは、単価を入れる前に元のファイルを日時付きでコピーします。おかしくなったら、コピーに戻せばいいだけです。
これもAIに頼めば付けてくれます。ただしこちらから言わないと付きません。「実行する前に元のファイルをコピーして残して」と、はっきり伝えてください。
未経験の私がつまずいた3つの落とし穴

実際にはまったものだけを挙げます。どれもコードの知識では防げません。業務を知っているかどうかで決まります。
落とし穴1|隠れている行を見落としていた
単価表の一部の行が、非表示になっていました。ツールはそこで表が終わったと判断し、途中までしか読んでいませんでした。
気づいたのは、合計が合わなかったからです。画面で見るぶんには、何も問題がないように見えていました。
長年の運用で、表には見えない事情が積もっています。行が隠してある、途中に空行がある、同じ表の中で書式が違う。作り始めてから気づくものばかりです。
落とし穴2|同じものが、別の名前で書かれていた
見積書と単価表で、同じ材料の書き方が違いました。角スタッドを、ある書類では「SQ」、別の書類では「□」、さらに別では「角」と書いていたのです。
人間なら全部おなじものだと分かります。機械は別物として扱います。
解決策は、表記のゆれを事前にそろえる仕組みを入れることでした。全角と半角、大文字と小文字、「形」と「型」。こうした違いを全部そろえてから突き合わせます。
この対応は、その会社の書類を知っている人にしかできません。外注では絶対に出てこない要件です。
落とし穴3|自分しか使えないツールになっていた
最初に作ったものは、私が手順を覚えているから動くツールでした。ファイルの置き場所や実行の順番を、私だけが知っている状態です。
これでは休んだ日に誰も使えません。会社の道具としては失格です。
今は、ボタンを1つ押せば終わる形に作り直しました。使い方をツールの中に書き、手順を覚えなくても迷わないようにしています。この話は連載の2本目で詳しく書きます。
自作が向かない作業もあります
何でも自作すればいいわけではありません。すでに良いソフトがある領域は、買ったほうが確実です。
たとえば仕訳や決算のように、法律が変わるたびに作り直しが必要なもの。ここを自作すると、制度改正のたびに自分で追いかけることになります。会計ソフトは、そこを肩代わりしてもらうために使うものです。
私が自作しているのは、市販のソフトが対応していない、自社だけの作業だけです。見積書の様式も、出面の数え方も、会社ごとに違います。だから売っていません。
\まずは市販ソフトで足りるかを確かめてから/
建設業向け会計ソフトの比較を読む今日できる最初の一歩

いきなりツールを作る必要はありません。今日やるのは、次の3つだけです。
- 今週やった作業を書き出す。時間がかかった順に並べる
- その中から「毎回おなじ手順」のものに印を付ける
- 印が付いた中で、一番小さい作業を1つ選ぶ
選んだ1つが、あなたの最初のツールになります。大きい作業から手を付けないでください。小さくて確実に終わるものから始めたほうが、結果的に早く進みます。

まとめ
プログラミング経験ゼロの私が、AIで業務ツールを作れた理由をまとめます。
- コードを書く力ではなく、業務を分かっていることが武器になる
- 自動化する作業は1つだけ選ぶ。毎回おなじ手順のものから
- 初版は1日で作って、その日のうちに本物の書類で試す
- 手作業の結果と突き合わせてから本番に使う
- 書き換えるツールには必ずバックアップを付ける
見積単価ツールは、1〜2時間かかっていた作業を1時間未満にしました。ゼロにはなりません。それでも、毎回の1時間が積み上がれば大きな差になります。
次回は、作ったツールを自分以外の人に使ってもらう方法を書きます。ここでつまずく人が一番多いところです。
以上、建設業7年目のおけいでした!


