元請に「化学物質RAを出して」と言われたら|書き方手順

化学物質リスクアセスメントの書き方のアイキャッチ 現場管理
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おけい
おけい
こんにちは、建設業7年目のおけいです。先日、元請さんから届いたメールに「化学物質のリスクアセスメント(有害性・危険性)」というExcelが入っていました。正直、この書類の存在を初めて知りました…。同じように急に頼まれて困っている方に向けて、実際に作った手順をまとめます!

🔍 先に結論

  • 化学物質のリスクアセスメントは、その材料を実際に使う会社(協力会社)に法律上の義務がある
  • シートは「有害性(体への害)」と「危険性(火災・爆発)」の2枚1組を製品ごとに作る
  • 材料のSDS(安全データシート)の4か所を見れば、ほとんどの欄が埋まる
  • 有機溶剤中毒予防規則(有機則)に当たる製品かどうかで、有害性シートの書き方が変わる

「化学物質リスクアセスメント」とは?なぜ急に求められるのか

化学物質のリスクアセスメントは、現場で使う材料に、どんな危険があるかを前もって調べて、対策を決めておく作業です。接着剤・塗料・シーリング材など、身近な材料の多くが対象になります。

根拠は労働安全衛生法の第57条の3です。ラベル表示やSDSの交付が義務づけられた物質(リスクアセスメント対象物)を扱う事業者は、危険性・有害性を調べなければなりません。対象の物質は2024年4月から段階的に増えています。

作るのは「使う会社」。元請はとりまとめ役

厚生労働省のQ&Aでは、原則として現場の作業員を直接雇っている会社が実施するとされています。つまり、接着剤を使う内装業者なら、内装業者が作ります。

元請は、現場全体の安全を管理する立場です。そのため、協力会社に様式を配って集めます。業種や会社の規模、使う量の多い少ないは関係ありません。

作るタイミングは3つ

  • 新しい材料を使い始めるとき・材料を変えるとき
  • 作業のやり方や手順を新しくする・変えるとき
  • SDSが改訂され、新しい危険の情報が出たとき

結果は、その材料を使う作業員に知らせる(周知する)義務があります。記録は次にリスクアセスメントをするまで保存し、3年以内に次をする場合でも最低3年間は残します。

じむねこ
じむねこ
元請さんの「出してね」は、元請さんのための書類じゃなくて、自分の会社の職人さんを守るための書類なんだね^^

作り始める前に準備するもの3つ

いきなりExcelを開く前に、次の3つをそろえます。

  1. 元請の様式:元請ごとに形が違います。サンプル(記入例)が付いていれば必ず目を通しましょう
  2. 使う材料のSDS:メーカーのサイトから取れることが多く、なければ購入先の商社やメーカーに依頼します
  3. 現場の情報:工事名、作業場所、作業内容、使用期間、作業主任者の名前

私の場合は、元請さんの様式に記入例のシートが何枚も入っていたので、それと見比べながら埋めました。記入例は、○の付け方や×の引き方まで分かるいちばんの手本です。

SDSは4か所だけ見ればいい【早見表】

SDSは16の項目に分かれていて、ページ数も多めです。ただ、シートを埋めるのに使うのは主に次の4か所です。

SDSの項目分かることシートのどこに使う?
2. 危険有害性の要約GHS分類(害の種類と区分)・絵表示絵表示の○、有害性・危険性の分類
3. 組成及び成分情報入っている成分と含有率「主な成分」欄、有機則の判定
9. 物理的及び化学的性質沸点・引火点・自然発火点危険性シートの特性値
15. 適用法令有機則・消防法などの該当有機溶剤・消防法の欄

対策を考えるときは、4.応急措置〜8.ばく露防止及び保護措置も参考にします。厚生労働省の「化学物質管理マニュアル 解説テキスト 接着関連作業」にも、SDSの見方がまとまっています。

有害性シートの埋め方|接着剤2つの実例

ここからは、私が実際に作った接着剤2種類(ここでは接着剤A・Bと呼びます)のシートで説明します。どちらも溶剤系の接着剤ですが、同じ「接着剤」でも書き方がまったく変わりました。

STEP1:絵表示に○を付ける

SDSの「2.危険有害性の要約」にある絵表示と同じマークを、様式の中で○で囲みます。有害性シートに並んでいるのは、体や環境への害のマークです。炎のマークは危険性シートの方で囲みます。

STEP2:有機溶剤・特定化学物質に当たるか確認する

SDSの「15.適用法令」で、有機溶剤中毒予防規則(有機則)や特定化学物質障害予防規則(特化則)の記載を探します。

接着剤Aは、15項に「有機溶剤中毒予防規則 第二種」と書かれていました。成分表を見ると、第二種有機溶剤のアセトンと酢酸エチルが合わせて5%を超えて入っています。有機則では、有機溶剤を重さの5%を超えて含むものが対象です。

そこで「第二種」に○を付け、元請のサンプルにならって、見積もり〜対策の欄に大きく×を引きました。

接着剤Aの有害性シート(有機則第二種に該当し、見積もり欄に×)

※画像の「RA不要」は元請様式の書き方です。「有機則の対策を確認・遵守することで、リスクアセスメントに替える」という意味です(下の説明を参照)。

「特別規則に当たるからリスクアセスメントは不要」という意味ではありません。義務は残りますが、有機則で決まっている対策を確認する方法で、実施したことにできるという扱いです(厚生労働省のQ&Aと指針による)。局所排気・換気、防毒マスク、作業主任者の選任など、有機則の対策は必ず守ります。

せきさんくん
せきさんくん
有機則の「第二種」かどうかは、15項(適用法令)に書いてあるよ!長い一覧の最後の方まで読もう!

STEP3:特別管理物質・女性則・SDSの有無

  • 特別管理物質:特化則のうち、がんなどのおそれがある物質。今回の2つは「該当しない」
  • 女性則による制限:女性労働者の就業が制限される物質(キシレン・トルエンなど26物質)が入っているか。今回の2つは「なし」
  • SDSの有無:手元にあれば「あり」

元請の様式に「表1・表2」のような物質一覧が付いていれば、成分の名前をそこで探すと早く判断できます。

STEP4:有害性のレベルを選ぶ(有機則に当たらない場合)

接着剤Bの主な成分はシクロヘキサン・ヘプタン・アセトンです。アセトンは1〜5%なので、5%を超えません。シクロヘキサンとヘプタンは、有機則の対象物質の一覧に名前がありません。そのため有機則には当たらず、表を埋めて評価しました。

SDSの2項のGHS分類と、様式の一覧を見比べて、当てはまる行に○を付けます。

  • 皮膚刺激性 区分2・眼刺激性 区分2 → レベルAとS(皮膚・眼への接触)
  • 特定標的臓器毒性(単回ばく露)区分2 → レベルB
  • 特定標的臓器毒性(反復ばく露)区分2 → レベルC

いちばん高いレベルがCなので、リスクの評価は「C(中)」に○を付けました。様式の判定表では「速やかにリスク低減措置を講じる必要がある」の段階です。

接着剤Bの有害性シート(有害性レベルを選び、リスクレベルCに○)

STEP5:対策に○を付け、特記事項を書く

対策の一覧から、SDSの注意書き(P260、P280などの記号付きの文)と合うものに○を付けます。接着剤Bでは、換気の効率を上げる・保護メガネとゴム手袋・防毒マスク・容器を密閉する、などを選びました。

特記事項には、様式の一覧にない大事な点を書きます。たとえば接着剤Bの成分のシクロヘキサンとヘプタン(ノルマルヘプタン)は、2025年10月1日から「濃度基準値」(屋内作業場で働く人がさらされてよい濃度の上限)が適用されています。この点を書き添えました。

危険性シートの埋め方|引火点からリスク値を出す

危険性シートは、火災や爆発の起こりやすさを点数で見積もります。手順は次の4つです。

  1. 絵表示(炎のマーク)に○、消防法の区分(今回は2つとも「第一石油類」)に○
  2. SDSの2項のGHS分類から「引火性液体 区分2」を探し、一次評価の点数を読む(今回は3点)
  3. SDSの9項から、沸点・引火点・自然発火温度を書き写す
  4. 施工する場所の温度と比べ、点数を上げる(ランクアップ)かを判断する

今回の2つは、どちらも引火点がマイナス20℃でした。施工環境温度はサンプルにならって25℃で計算しました。温度が引火点以上なので、点数を1つ上げて「3+1=4」です。最終的なリスクレベルは4(可能性が極めて高い)になりました。

接着剤Bの危険性シート(引火点からリスクレベル4を算出)

引火点がマイナス20℃なら、ほとんどの冬の現場でも気温は引火点を上回ります。「寒い時期だから大丈夫」とは言えません。対策は、火気厳禁・容器の密閉・涼しい場所での保管・静電気対策などに○を付けました。

作ってみて気づいた3つのこと

1. 「第二種」がどこに書いてあるか分からなかった

最初は「SDSのどこにも第二種と書いていない」と思い込んでいました。実際には、15項の長い法令の一覧の最後の方に、1行だけ書かれていました。判断に迷ったら、15項を最後の行まで読むのがおすすめです。

2. ○は手書きではなく「図形」だった

サンプルの○は、セルの文字ではなくExcelの図形(塗りつぶしなしの楕円)でした。サンプルの○をコピーして位置だけ動かすと、見た目がそろいます。一方、リスク低減対策の欄の○は、セルに「○」の文字を入れる方式でした。

3. 成分名だけでは、有機則の対象か判断できない

今回の接着剤Bに入っていたシクロヘキサンやヘプタンは、有機溶剤らしい名前ですが、有機則の対象物質の一覧にはありません。反対に、よく似た名前のノルマルヘキサンは第二種の対象です。名前の印象で決めず、SDSの15項と有機則の一覧で確認しましょう。

なお私は、SDSの読み取りや表の埋め方をAIに手伝ってもらいながら作りました。ただし、最後の判断は必ずSDSの原文で確かめるのが前提です。

よくある誤解3つ

よくある誤解実際は
有機則の対象なら、リスクアセスメントは不要義務は残る。有機則の対策を確認する方法で実施できる
元請が作ってくれる書類原則は作業員を直接雇う会社が作る(混在作業などは元請が全体を実施)
保存は一律3年次のリスクアセスメントまで保存(3年以内に次をする場合は3年)

また、2024年4月からは、リスクアセスメント対象物を扱う事業場ごとに「化学物質管理者」の選任も義務になっています。自社で決まっているか、あわせて確認しておくと安心です。

提出前のチェックリスト

✅ 出す前にここだけ確認

  • 製品ごとに「有害性」「危険性」の2枚がそろっている
  • 製品名・主な成分がSDSの3項と合っている
  • SDSの版(改訂日)が新しいものを使っている
  • 絵表示の○が、SDSの2項のマークと一致している
  • 有機溶剤・特定化学物質の判定を、15項で確認した
  • 有機則に当たる場合、作業主任者の名前が入っている
  • 危険性シートの沸点・引火点・自然発火温度を9項から写した
  • 使用期間・作業内容・作業場所が現場の実態と合っている
  • リスクアセスメントの周知(説明する日)を決めた
  • 提出したファイルとSDSを社内でも保存した

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まとめ:SDSと元請のサンプルがあれば、初めてでも作れる

化学物質のリスクアセスメントシートは、見た目は難しそうでも、やることは「SDSの4か所を読んで、様式に写して判断する」ことです。

  • 作るのは材料を使う会社。製品ごとに有害性・危険性の2枚
  • SDSの2・3・9・15項を見る
  • 有機則に当たるかどうかで、有害性シートの書き方が変わる
  • 作ったら職人さんに説明し、記録を残す

まずは、手元にある材料のSDSを1枚出して、15項を最後まで読んでみてください。

おけい
おけい
私もこの書類は今回が初めてでした。それでも、SDSとサンプルを並べて1欄ずつ埋めれば、ちゃんと形になります。急に頼まれた方の参考になればうれしいです!