上乗せ労災は下請けと按分|安全協力会費の使い道と分け方

上乗せ労災は下請けと按分 安全協力会費の使い道と分け方(盾を自社と協力会社で分けたイメージ) 建設業の経理・仕訳
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おけい
おけい
こんにちは、建設業7年目のおけいです。うちの会社は昨年から、協力会社さんも補償に含めた上乗せ労災に入っています。1年目は、保険料を全額、安全協力会費から払っていました。ところが決算のあと、税理士さんに「本当はダメなんだけどね」と言われて、びっくりしたんです。

🔍 先に結論

  • 上乗せ労災の保険料を全額、安全協力会費から払うのは避けたほうが安心
  • 保険証券を見ると、補償の対象は「自社」と「下請(協力会社)」に分かれている
  • 保険会社は区分ごとの保険料を出さないので、分け方は会社で決めるしかない
  • 決めた分け方と会費の使い道は、協力会社に説明できる形で残しておく

安全協力会費は、協力会社への支払いから差し引いて預かっているお金です。うちの会社では預り金で処理しています。

そこで今期から払い方を直すことにして、保険証券を見直し、保険代理店にも問い合わせました。そこで分かったのは、この保険は協力会社だけでなく、自社の役員・従業員も守っているということです。

会社の実際の数字は出せないので、計算はすべて例の数字で紹介します。

「安全協力会費で保険料を払う」はよくある形

協力会費から上乗せ労災の保険料を払う会社は、珍しくないと思います。保険が協力会社の作業員も補償するので、協力会社にも関係のある使い道だからです。

ただ、この「よくある形」には、確認しておきたい点が2つあります。保険のしくみと、会費を差し引くときのルールです。

上乗せ労災は、政府労災の「代わり」ではない

まず、国の労災保険(政府労災)です。建設現場では、工事全体を請け負った元請がまとめて労災保険に入ります。

下請の作業員も、この元請の労災で補償されます。労働保険徴収法第8条で、何層にも請負が重なる工事は元請を事業主とみなす、と決められているためです。この仕組みは労災保険だけで、雇用保険はそれぞれの会社で入ります。

注意したいのは、下請の社長や一人親方は政府労災の対象外という点です。補償を受けるには、本人が特別加入する必要があります。

上乗せ労災は、損害保険会社の任意の保険です。「業務災害総合保険」などの名前で販売されています。政府労災の代わりではなく、政府労災の補償に上乗せする保険です。

保険金は、まず契約した会社(元請)に支払われます。会社は、それを補償の対象になった人に渡す必要があります。

協力会費の差し引きは「赤伝処理」にあたる

下請代金を払うときに、元請が諸費用を差し引くこと。これを赤伝処理といいます。

国土交通省の「建設業法令遵守ガイドライン」では、差し引く費用の例に「安全協力会費」がはっきり書かれています。赤伝処理そのものは、ただちに建設業法違反になるわけではありません。ただし、何をいくら差し引くのか、元請と下請で話し合って合意しておく必要があります。

けいりん
けいりん
協力会費は「協力会社から預かっているお金」だよ!だから、何に使ったかを説明できることが大事なんだ^^

まず保険証券で「誰が補償されるか」を見る

保険証券を広げ、補償対象が自社と協力会社に分かれていることに気づく経理担当

税理士さんに言われて、私が最初にしたのは、保険証券を見直すことでした。

証券では、補償の対象が2つの区分に分かれていました。

区分補償の対象
001事業主・役員・自社の被用者(従業員)
002下請負人とその被用者(協力会社と、その作業員)

さらに、使用者賠償責任・雇用慣行賠償責任・事業主相談費用といった特約も付いていました。どれも、主に会社自身を守るための特約です。

一方で、保険料は売上高をもとに1本で計算されていました。区分ごとにいくらかという内訳は、どこにも書かれていません。

証券を見て、はっきりしました。この保険が守っているのは協力会社だけではありません。自社の役員・従業員と、会社そのものも守っています。

全額を会費から払うと何が問題か

保険料を全額、協力会費から払うと、次の3つが気になります。

1. 自社の従業員の分まで、協力会社に負担させる形になる

証券の001は、自社の役員・従業員の補償です。この分まで会費で払うと、自社の人の保険料を、協力会社のお金で払っていることになります。

協力会社から「その会費、何に使っているの?」と聞かれたとき、説明しにくい形です。

2. ガイドラインの「根拠が明確でない差し引き」に近づく

ガイドラインでは、次のような差し引きを問題にしています。

  • 合意のないまま、一方的に差し引く
  • 合意はあっても、根拠がはっきりしない金額を差し引く
  • 実際にかかった費用を超えて差し引く

こうした差し引きは、建設業法第18条の趣旨に反し、第28条第1項第2号の「不誠実な行為」となるおそれがあるとされています。差し引いた結果、通常必要な原価を下回る代金になれば、第19条の3第1項(不当に低い請負代金の禁止)に違反するおそれもあります。

ガイドラインは、安全協力費などについて差引額の計算の根拠と使い道をはっきりさせ、下請と十分に話し合うことを求めています。工事が終わったら収支を見せるなど、透明にしておくことも大切です。合意した内容は、書面に残すのが望ましいとされています。

なお、ガイドラインには「協力会費を任意労災の保険料に使ってよいか」という記述はありません。使い道に合意があるか、使い道を見せているかで考えるのが基本です。

3. 会社の経費が帳簿に出てこない

会費を預り金で処理している場合、保険料を全額そこから払うと、自社分の保険料が会社の経費として帳簿に出てきません。

保険料のうち、どこまでが自社の負担なのか。帳簿から読み取れないと、決算や税理士への説明がしにくくなります。

会費を預り金でよいか、保険料をどの科目にするか、消費税をどう扱うか。こうした会計・税務の判断は、顧問税理士に確認してください。保険料そのものは消費税が非課税です(国税庁タックスアンサーNo.6201)。

じむねこ
じむねこ
「去年もこうしたから」は説明にならないにゃ。まずは今の払い方を書き出してみよう!

代理店に聞いてわかったこと

証券に内訳がないので、保険代理店に、自社分と下請分の保険料の内訳を問い合わせました。

答えは次のとおりです。

  • 保険会社は区分ごとの保険料(内訳)を開示していない。だから、明確な分け方のルールはない
  • 他社には、決算書の売上高と外注費の割合で按分する方法を案内している
  • 材料費や車両費の一部も協力会社が使っているとして、外注の割合を増やし、会社の負担を減らしている会社もある(あくまで一例)

つまり、正解の分け方は用意されていません。会社で分け方を決めて、その理由を説明できるようにしておくしかない、ということです。

按分の決め方は2つ

保険料の袋を会社側と作業員側に分けて天秤にのせたイメージ

代理店の話をもとに、按分(あんぶん=割合で分けること)の方法を2つに整理しました。例の条件は次のとおりです。

  • 売上高:1億円
  • 上乗せ労災の年間保険料:20万円
分け方割合の出し方下請分
(会費から)
自社分
(会社負担)
①外注費だけで分ける外注費5,000万円÷売上高1億円=50%10万円10万円
②材料費・車両費も含める(外注費+材料費+車両費)8,000万円÷売上高1億円=80%16万円4万円
※数字はすべて例です

①外注費だけで分ける

決算書の売上高と外注費だけで計算できます。数字の出どころがはっきりしているので、協力会社に説明しやすい方法です。

②材料費・車両費も含める

協力会社が、会社の材料や車も使っている実態を割合に反映させる方法です。①より下請分が大きくなり、会社の負担は小さくなります。

うちの会社が②にした理由

うちの会社では今期から、材料費と車両費も加えて、保険料の80%を下請分(会費から払う分)とすることにしました。理由は3つです。

  1. 会社の材料を、協力会社も使っている
  2. 会社の車で、協力会社の作業員を送迎したり、材料を運んだりしている
  3. 現場で作業する人の大半が、協力会社の作業員である

②を選ぶときの注意点

②は「正解」ではなく、選び方の1つです。選ぶなら、次の2点を意識しておきましょう。

  • 下請分が大きいほど、協力会社への説明が大事になる。材料費や車両費を入れた理由を、言葉で説明できるようにしておく
  • 会社を守る特約の分まで、下請分に入ってしまう。使用者賠償責任などの特約は会社のためのもの。保険料が1本で計算される以上、割合で分けるとこの分も会費側に含まれる

①と②のどちらを選んでも、大切なのは理由を書いて残し、毎年同じやり方で計算することです。

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第4章で、外注費と一人親方への支払い・建設業法との関係・支払う前の確認表をまとめています

今日からできること

チェックリストを見ながら協力会社の担当者に資料で説明する経理担当

上から順に進めれば、協力会社に説明できる形に近づきます。

✅ チェックリスト

  • □ 保険証券で、補償対象の区分(自社/下請)と特約を確認する
  • □ 保険代理店に、区分ごとの保険料(内訳)が出せるか聞く
  • □ 按分の方法(①か②か)と理由を決め、社内メモに残す
  • □ 協力会の規約や注文書・請書に、会費の使い道を書く
  • □ 年に1回、会費の収支を協力会社に見せる
  • □ 会費の科目・保険料の科目・消費税の扱いを、税理士に確認する

特に「使い道を書く」と「収支を見せる」の2つは、ガイドラインが求める透明性の確保につながります。協力会社との信頼にもつながります。

📌 あわせて読みたい

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仮払金・仮受金と預り金・立替金の使い分けを一覧表で整理。安全協力会費が差し引かれて入金されたときの確認の仕方にも触れています。

まとめ

  • 上乗せ労災は政府労災の代わりではなく、上乗せの任意保険
  • 保険証券では、補償対象が自社と下請に分かれていることが多い
  • 全額を会費から払うと、自社分まで協力会社に負担させる形になる
  • 内訳は保険会社が出さないので、外注費の割合などで按分して会社で決める
  • 分け方と使い道は書いて残し、協力会社に見せられるようにしておく

まずは保険証券を1枚、手元に出してみてください。補償対象の欄を見るだけで、会費から払う範囲を考える手がかりになります。

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おけい
おけい
「全部会費から払って大丈夫?」と気になったことが、見直すきっかけでした。毎年払っているお金ほど、一度立ち止まって見直す価値があると思います!

以上、建設業7年目のおけいでした!

※この記事は筆者の会社での対応をもとに、例の数字で説明したものです。保険の補償内容は契約によって異なります。会計・税務の扱いは顧問税理士に、補償の範囲は保険代理店にご確認ください。