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建設業では工事着工前に「着手金」を受け取ることがよくあります。
しかし、着手金は工事完成前に受け取るお金なので、受取時点では売上にはなりません。この点を間違えると、税務申告でも問題が生じるため注意が必要です。
私自身も初めて着手金を受け取った時に「完成工事未収入金?前受金?」と迷った経験があります。この記事で正しい処理方法をマスターしましょう。
🔍 先に結論


着手金とは、工事の請負契約を締結し、工事着工前または着工時に発注者から受け取る代金の一部です。
建設業では工事完成基準が原則のため、工事が完成し引き渡しが完了するまでは収益を計上できません。
そのため、着手金を受け取っても「まだ工事が完成していない=売上ではない」という扱いになります。

着手金を受け取った時点では、「未成工事受入金」(負債)として計上します。

| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 5,500,000円 | 未成工事受入金 | 5,000,000円 |
| 仮受消費税 | 500,000円 |
※税込み経理の場合は消費税を含めた金額で未成工事受入金に計上するケースもあります。会社の経理方針に合わせて処理してください。

工事が完成し、発注者に引き渡した時点で、未成工事受入金を完成工事高(売上)に振り替えます。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金(残金) | 27,500,000円 | 完成工事高 | 30,000,000円 |
| 未成工事受入金 | 5,000,000円 | 仮受消費税 | 3,000,000円 |
このように、受け取っていた着手金を完成工事高に充当し、残金は完成時に受け取ります。

着手金と似た科目に「前受金」がありますが、建設業では使い分けが重要です。
| 科目 | 使う場面 |
|---|---|
| 未成工事受入金 | 建設業の工事に関する前受金(業界固有科目) |
| 前受金 | 一般的な商品・サービスの前受金 |
建設業の場合は「未成工事受入金」を使うのが正しい科目です。建設業財務諸表の様式に合わせた科目を使うことで、建設業許可の更新申請などもスムーズに進みます。

着手金を受け取った時点で消費税が発生します(課税売上)。
インボイス制度(適格請求書等保存方式)に対応するため、着手金の請求書もインボイスとして発行する必要があります。

着手金を受け取った際の消費税は、工事の引き渡し時点(役務提供完了時)が原則的な課税時期です。受け取った段階で消費税を計上するかどうかは、会計処理の方針によって異なります。
| 処理方式 | 着手金受取時 | 引き渡し時 |
|---|---|---|
| 消費税を受取時に区分する方式 | 未成工事受入金(内税) | 引き渡し時に完成工事高へ振替・消費税確定 |
| 消費税を引き渡し時にまとめる方式 | 未成工事受入金(税込み全額) | 引き渡し時に完成工事高+仮受消費税へ振替 |

2023年10月のインボイス制度導入以降、着手金を受け取った際の処理でも注意点が増えました。
発注者(工事依頼主)から着手金を受け取る際、適格請求書(インボイス)の交付が必要なタイミングは「工事完成・引き渡し時の最終請求書」が一般的ですが、着手金受取時に領収書を発行する場合はインボイス登録番号の記載が必要になります。
受け取った着手金の一部または全額を返還することになった場合、次のように仕訳します。
| 状況 | 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 着手金の全額返還 | 未成工事受入金 | 550,000 | 現金・預金 | 550,000 |
| 一部返還(違約金相殺) | 未成工事受入金 | 550,000 | 現金・預金 400,000 / 違約金収入 150,000 | 550,000 |


着手金の処理でトラブルが起きやすいのは、契約書の内容と実際の受け取り方にギャップがある場合です。工事契約書を確認する際は、次のポイントをチェックしましょう。
まず「着手金の支払い条件」として、いつまでに・いくらを受け取るのかが明確に記載されているかを確認します。次に「工事キャンセル時の取り扱い」として、着手金の返還条件・違約金の規定が記載されているかを確認します。
工事代金の回収リスク管理という観点では、着手金は発注者の支払い意思・能力を確認するための手段でもあります。着手金を受け取る前に工事に着手するのは、代金未回収リスクが高まるため注意が必要です。
私が実務で経験したケースとして、発注者から「着手金は工事完了後に一括で払いたい」と言われることがあります。このような変則的な支払い条件は、リスク管理の観点から工事着手前に経営陣と確認するようにしています。
着手金の仕訳で重要なのは、受け取った金額を「未成工事受入金」で管理し、工事完成まで売上に計上しないことです。この原則を守ることで、建設業の会計処理の正確性が保たれます。
実務では、発注者との関係で「着手金を少額にしたい」「着手金なしで工事してほしい」という要望を受けることがあります。しかし資金繰りと未回収リスク管理の観点から、着手金の受け取りは重要です。適切な着手金設定は会社経営の安定につながります。
着手金の会計処理を正確に行うことで、工事ごとの資金管理と売上計上のタイミングが明確になります。発注者との信頼関係を築きながら、適切な前払いを受け取ることが建設業経営の安定につながります。

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