
金融機関からは「最長8年まで借りられます」と言われていました。それなのに、提案されたのは7年。理由の説明はありませんでした。
社長への答えは「金融機関にそう言われたので」だけ。経理として、これでは説明になっていません。
そこで、返済期間ごとの比較表を自分で作りました。結果、うちの会社には8年のほうが合っているとわかりました。
この記事では、そのときの比べ方を架空の数字で再現します。
🔍 先に結論
- 返済期間を延ばすと、毎月の返済は軽くなり、利息と保証料は増える
- 比べるのは総額ではなく、「毎月いくら軽くなるか」と「総額がいくら増えるか」の2つ
- 増えるコストを年率に直すと、今回の例では約1.6%。手元にお金を残す価値がそれより大きいなら、長いほうが合う
- 私は「迷ったら長め」と考えました。早く返すのは後からできるが、後から延ばすには審査や条件変更が必要だからです
金融機関に「7年」をすすめられた話

うちの会社は、信用保証協会の保証が付いた短期の融資を、何本か借りていました。毎月の返済がきつい。これが悩みでした。
そこで、まとめて長期の融資に借り換えることにしました。条件は金利0.5%、期間は最長8年です。
ところが、金融機関の提案は7年でした。私はそのまま社長に伝えました。返ってきたのが冒頭の質問です。
「なんで8年じゃなくて7年なの?うちにとって、それがいいの?」
言われてみれば、たしかにそうです。最長8年なのに、なぜ7年なのか。聞かれるまで、疑問にも思っていませんでした。
金融機関が短めをすすめる理由
理由を公式に説明した資料は見つかりませんでした。私が考えた理由は、次の2つです。
- 返済が早く進むほど、貸す側のリスクが下がる
- 総支払額が少なくなるので、「お得な期間」として提案しやすい
どちらも間違いではありません。ただ、「借りた会社の資金繰りがどうなるか」という視点は入っていません。そこを考えるのは、借りる側の仕事です。

返済期間で変わる3つのお金
返済期間を変えると、次の3つが動きます。
- 毎月の返済額:期間が長いほど軽くなる
- 利息の合計:期間が長いほど増える
- 信用保証料:期間が長いほど増える
見落としやすいのが3つ目の保証料です。
保証料は「借りている年数」に比例して増える
毎月同じ額の元金を返していく場合、保証料は次の式で計算します。
保証料 = 借入額 × 保証料率 × 返済月数÷12 × 分割係数
分割係数は、返済の回数で決まります。毎月同じ額を返す「均等分割」の場合は、次のとおりです。
| 返済回数 | 分割係数(均等分割) |
|---|---|
| 2〜6回 | 0.70 |
| 7〜12回 | 0.65 |
| 13〜24回 | 0.60 |
| 25回以上 | 0.55 |
5年でも8年でも、係数は同じ0.55です。つまり保証料は、ほぼ年数に比例して増えます。
保証料率は、決算の内容によって9つの区分から決まります(東京信用保証協会の一般的な保証なら年0.45%〜1.90%。制度融資ではもっと低いこともあります)。自社の率は、金融機関に聞けば教えてもらえるので確認してみましょう。
もう1つ大事なのが、保証料は原則、融資を受けるときに一括で払うことです。期間を延ばすと、借りた時点で出ていくお金も増えます。
協会の表では、毎月同じ額の元金を25回以上返す場合は0.55です。係数は返済方法や制度で変わります。自社の数字は必ず金融機関に確認してください。

5年〜8年で比べてみた(架空の例)

実際の会社の数字は出せないので、次の架空の条件で計算します。
- 借入額:2,000万円
- 金利:年0.5%
- 保証料率:年1.00%
- 返済方法:毎月、同じ額の元金を返す(分割係数0.55)
| 期間 | 毎月の元金返済 | 利息の合計 | 保証料 | 総コスト (利息+保証料) |
|---|---|---|---|---|
| 5年 | 333,000円 | 254,577円 | 550,000円 | 804,577円 |
| 6年 | 278,000円 | 304,127円 | 660,000円 | 964,127円 |
| 7年 | 238,000円 | 354,541円 | 770,000円 | 1,124,541円 |
| 8年 | 208,000円 | 405,063円 | 880,000円 | 1,285,063円 |
総コストだけを見ると、いちばん安いのは5年です。8年は5年より約48万円多くかかります。
この見方なら「短いほど得」になります。金融機関が7年をすすめたのも、この見方なら納得です。
見るべきは「1年延ばすと何が変わるか」
次に、1年ずつ延ばしたときの差を見ます。
| 延ばし方 | 毎月の元金返済 | 総コスト |
|---|---|---|
| 5年→6年 | 55,000円軽くなる | 159,550円増える |
| 6年→7年 | 40,000円軽くなる | 160,414円増える |
| 7年→8年 | 30,000円軽くなる | 160,522円増える |
7年を8年にすると、毎月3万円軽くなり、総コストは約16万円増えます。社長に説明するとき、必要なのはこの2つの数字でした。
増えるコストを「年率」に直す
約16万円は、高いのでしょうか。安いのでしょうか。
判断するために、増えたコストを年率に直しました。期間を延ばすと、その分だけ長く、多くのお金を手元に置いておけます。その「余分に借りているお金」に対して、年何%払っているかを計算します。
今回の例では、7年を8年にすると約1.6%でした(金利0.5%と、保証料の約1.1%を合わせた率です)。8年を選ぶことは、「手元に残るお金を、年1.6%ほどで借りている」のと同じです。
この1.6%を、資金が足りなくなったときに新しく借りるコストと比べます。新しい融資には審査があり、必要なときに借りられるとは限りません。保証協会付きなら、金利に加えて保証料もまたかかります。
私が8年を選んだ2つの理由

理由1|借り換えの目的が「毎月の返済を軽くすること」だった
もともと、毎月の返済がきついから借り換えたのです。目的に合うのは、毎月がいちばん軽くなる期間でした。
総コストの差は、この目的を達成するための費用と考えました。
理由2|早く返すのは後からできる。延ばすのは簡単ではない
8年で借りても、お金に余裕が出たら繰上返済で早く返せます。
逆に、7年で借りて後から苦しくなったとき。期間を延ばすには、借り換えの審査に通るか、条件変更(リスケ)を頼むことになります。リスケをすると、しばらくは新しい融資を受けにくくなるのが一般的です。
後から取れる手があるのは、長いほうでした。
ただし、保証料は借りるときに払い済みです。一部だけ繰上返済しても、延ばした分の保証料は戻らないと考えておきましょう。繰上返済で減らせるのは、主に利息です。
補足|期限前に完済すると、保証料の一部が戻ることがある
保証期間の途中で完済すると、払った保証料の一部が戻る場合があります(東京信用保証協会の場合。戻る額が1,000円以下なら対象外)。
ただし、全額は戻りません。途中で一部だけ繰上返済したときの扱いや、金融機関の繰上返済手数料もあります。繰上返済を考えるなら、借りる前に確認しておきましょう。

短い期間のほうが合う会社もある
長いほうが必ず正解、ではありません。次のような会社は、短い期間のほうが総コストを抑えられます。
- 手元のお金に余裕があり、毎月の返済が負担になっていない
- しばらく大きな支払いや投資の予定がない
- 余ったお金を、結局は使わずに置いておくだけになる
手元に残したお金を使う場面がないなら、年1.6%を払って借りておく意味は薄くなります。決め手は「手元のお金がどれだけ必要か」です。
今日からできる3ステップ
- 金融機関に4つ聞く:借りられる最長の期間/保証料率/分割係数(返済方法)/繰上返済の手数料と保証料の戻り方
- 比較表に入れる:借入額・金利・保証料率・借入日を入れれば、期間ごとの毎月の返済と総コストが並びます
- 社長には2つの数字で伝える:「毎月いくら軽くなるか」と「総額がいくら増えるか」
まとめ
- 返済期間を延ばすと、毎月は軽くなり、利息と保証料は増える
- 保証料はほぼ年数に比例し、原則として借りるときに一括で払う
- 比べるのは「毎月いくら軽くなるか」と「総額がいくら増えるか」
- 増えるコストを年率に直し、新しく借りるコストと比べる
- 繰上返済は後からできる。ただし一部の繰上返済では保証料は戻らない
金融機関の提案は、あくまで提案です。借りる前に「最長の期間」と「保証料の係数」を聞くだけで、選び方が変わります。
※この記事は筆者の体験をもとにした試算です。実際の保証料・返済額は、金融機関や信用保証協会の返済予定表でご確認ください。


