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2021年4月から、売上の計上タイミングに関するルール「収益認識に関する会計基準」が上場企業に強制適用されました。
建設業にとってもこの改正は無関係ではなく、特に工事の収益計上方法に影響があります。
ただし、中小企業は適用が義務ではないため、まずは「どう変わったのか」「自社に関係するのか」を正しく理解することが重要です。
🔍 先に結論


収益認識基準とは、「いつ・どのタイミングで売上(収益)を計上するか」についての会計ルールです。
2021年の改正では、IFRS(国際財務報告基準)と統一する形で「顧客への財・サービスの移転と引き換えに受け取る対価を、履行義務の充足に応じて認識する」という考え方が導入されました。


収益認識基準では、収益を認識するタイミングを次の2つに分けて考えます。
| 区分 | 収益認識タイミング | 建設業での対応 |
|---|---|---|
| 一時点での認識 | 工事完成・引き渡し時点 | 従来の工事完成基準と同じ |
| 一定期間での認識 | 工事進捗に応じて毎期 | 従来の進行基準に対応 |
建設工事は長期にわたるため、「一定期間での認識(進行基準)」が原則となります。ただし、一定の要件(工事期間が短い、金額が小さいなど)を満たす場合は完成時点での認識も認められます。

工事合計3,000万円、工事期間2年、初年度の進捗率40%とした場合:
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 完成工事未収入金 | 12,000,000円 | 完成工事高 | 12,000,000円 |
(3,000万円 × 40% = 1,200万円を売上計上)

| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 完成工事未収入金 | 18,000,000円 | 完成工事高 | 18,000,000円 |
(残り60%分 = 1,800万円を完成年度に計上)

上場企業や大会社(資本金5億円以上または負債200億円以上)は2021年4月から強制適用です。
中小の建設会社は強制適用ではありません。引き続き工事完成基準(従来の方法)を使うことができます。
ただし、銀行融資・建設業許可申請・取引先の要請によっては、収益認識基準に沿った財務諸表の作成を求められることもあるため、内容の理解は必要です。

2021年4月から大企業に強制適用された収益認識基準(ASC606に相当する日本基準)は、建設業の会計処理にも大きな影響を与えました。主なポイントを整理します。
| 改正前 | 改正後(新基準) |
|---|---|
| 工事完成基準が一般的 | 「履行義務の充足」に応じた収益計上が原則 |
| 工事完成時に一括計上も可 | 一定期間にわたる履行義務は進行基準が必要 |
| 中小企業への強制適用なし | 中小企業には選択の余地あり(完成基準も継続可能) |


中小建設業者(非上場・一定規模以下)では、引き続き従来の工事完成基準を適用することができます。ただし、次のような場合は新基準の考え方を参考にする必要があります。

進行基準(一定期間にわたる履行義務)を適用する場合、工事の進捗度に応じて毎期末に収益を計上します。
| 工事進捗 | 計上する収益 | 仕訳 |
|---|---|---|
| 30%完了時 | 請負金額×30% | (借)未成工事受入金 / (貸)完成工事高 |
| 70%完了時 | 請負金額×40%(累計70%分) | (借)未成工事受入金 / (貸)完成工事高 |
| 完成・引き渡し時 | 請負金額×30%(残り分) | (借)未成工事受入金・完成工事未収入金 / (貸)完成工事高 |
進行基準では進捗度の算定方法(原価比例法・工数法など)を継続適用することが求められます。毎期同じ方法で算定することが原則です。


収益認識基準は財務諸表の作成ルール(会計基準)であり、法人税の課税所得計算とは必ずしも一致しません。財務会計で進行基準を適用した場合でも、税務上は別の基準で申告調整が必要なケースがあります。
具体的には、会計上で進行基準による収益を計上していても、税務上の「工事進行基準」の要件(長期大規模工事の基準)を満たさない場合、申告書で会計と税務の差額を調整する必要があります。税理士との緊密な連携が重要です。
収益認識基準の適用に際して私が実務で学んだことは、「どの工事にどの収益認識方法を適用するか」の判断基準を社内で統一しておくことの重要性です。工事の種類・規模・契約内容によって適用基準が変わる場合があるため、年度始めに税理士とすり合わせておくことをおすすめします。
中小建設業者では当面は工事完成基準での処理が現実的ですが、将来的な上場・事業拡大を見据えている場合や、大手ゼネコンの下請けとして連結決算に含まれる可能性がある場合は、早めに収益認識基準の適用を検討することが大切です。
収益認識基準の適用判断は専門性が高く、税理士・公認会計士の助言が欠かせません。自社の工事規模・契約形態・財務報告の目的(銀行融資・入札・上場準備など)を整理した上で、毎年度始めに適用方針を確認することをおすすめします。収益認識基準を正しく適用することが、信頼性の高い財務諸表の作成につながります。
収益認識基準の理解を深めることは、建設業経理担当者としての専門性向上につながります。会計基準の考え方と税務上の取り扱いの違いを理解し、適切に対応することで、信頼性の高い財務報告が実現します。


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