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🔍 先に結論
- どの会社にも関係するのは「カスハラ対策の義務化」と「最低賃金の改定」
- インボイス未登録の一人親方に外注していれば、外注費の消費税の控除が80%→70%に
- パートの社会保険・労働条件通知書は、会社の人数と雇い方しだいで関係が変わる
- まずは下のチェックリストで、自社に関係する項目だけを拾えば十分
- 10月の法改正は「全部」ではなく「自社に関係するもの」を押さえる
- 10月の制度変更を見落としやすい3つの理由
- 30秒でわかる!自社に関係する項目チェックリスト
- ①インボイス:外注費の消費税の控除が80%→70%に
- ②カスハラ対策が、すべての会社の義務に
- ③最低賃金の改定:発効日は都道府県ごとに違う
- ④パートの社会保険:「月8.8万円」の条件がなくなった(51人以上の会社は加入もれの確認を)
- ⑤50人以下の会社向け:パートの保険料を軽くできる制度が始まった
- ⑥パート・有期社員の労働条件通知書に一文を追加
- ⑦一人親方本人に関係すること
- 「10月から」と勘違いしやすい制度の早見表
- 今月中にやることリスト
- まとめ:自社に関係する項目から、1つずつ片づけよう
10月の法改正は「全部」ではなく「自社に関係するもの」を押さえる
2026年10月1日前後に、税金・労務・社会保険の制度がまとめて変わりました。ニュースで見かけるたびに「これもやらなきゃ」と焦る方も多いと思います。
ただ、すべてが自社に関係するわけではありません。大事なのは、全部を覚えることではなく「うちが対象かどうか」を見分けることです。対象でない制度に時間を使うより、対象の制度を確実に済ませるほうが、事務の負担もミスも減ります。
10月の制度変更を見落としやすい3つの理由
理由1:「10月1日から」とは限らない
最低賃金は、都道府県ごとに発効日が違います。2026年度は10月1日から12月2日まで、ばらばらです。インボイスの新しい上限額も、「10月1日以後に始まる課税期間から」(個人は2027年分から)の適用です。日付を一律に考えると、早すぎたり遅すぎたりします。
理由2:会社の人数や雇い方で対象が変わる
パートの社会保険のルール変更は、厚生年金に入っている人が51人以上の会社が中心です。パート・有期社員のルールは、そもそも雇っていなければ関係ありません。同じ「10月の法改正」でも、会社によって答えが変わります。
理由3:「終わった制度」は知らせが届きにくい
新しく始まる制度は話題になります。一方で、インボイスの「80%控除」の期間や「2割特例」のように、終わる制度は静かに終わります。気づかないまま前と同じ処理を続けると、決算や申告のときに直す羽目になります。

30秒でわかる!自社に関係する項目チェックリスト
当てはまるものがあれば、右の番号の章を読んでください。

| チェック項目 | 読む章 |
|---|---|
| □ インボイス未登録の一人親方・職人に外注している | ① |
| □ 従業員がいる(人数は問わない) | ② |
| □ パート・アルバイトや日給・月給の従業員がいる(最低賃金の確認) | ③ |
| □ 厚生年金に入っている人が51人以上で、パートを雇っている | ④ |
| □ 50人以下だが、パートを社会保険に入れることを考えている | ⑤ |
| □ パート・有期契約の人を雇っている | ⑥ |
| □ 自分が一人親方・個人事業主(または外注先に一人親方が多い) | ⑦ |
①インボイス:外注費の消費税の控除が80%→70%に
インボイス未登録の外注先(免税事業者の一人親方など)への支払いは、消費税の一部しか差し引けません。この割合が、2026年10月1日以後の仕入れから80%→70%に下がりました。9月30日までの仕入れは80%のままです。割合は請求書の日付ではなく、仕入れの日で判断します。外注(工事の請負)は、原則として作業が全部終わった日(引き渡しがあるものは引き渡しの日)です。9月に始まり10月に終わった工事は、全額が70%になります。
| 仕入れの時期 | 控除できる割合 |
|---|---|
| 2023年10月〜2026年9月 | 80% |
| 2026年10月〜2028年9月 | 70%(今ここ) |
| 2028年10月〜2030年9月 | 50% |
| 2030年10月〜2031年9月 | 30% |
| 2031年10月〜 | 控除できない |
出典:国税庁「令和8年度税制改正特集(インボイス制度)」。あわせて、この経過措置を使える上限も下がりました。同じ相手からの仕入れが、1年間(法人は事業年度)で税込1億円(改正前は10億円)を超えた分には使えません。この上限は2026年10月1日以後に始まる課税期間からです。たとえば3月決算の会社なら2027年4月からの期、10月決算の会社なら2026年11月からの期が対象になります。
会社がやること
- 会計ソフトの経過措置の設定が、10月以降の仕入れで70%になるか確かめる
- 外注先のインボイス登録状況を、国税庁の公表サイトで確かめ直す
- 未登録の外注先と単価を話し合うときは、建設業法第19条の3(不当に低い請負代金の禁止)に注意する

仕訳の具体例は「【外注費の仕訳】2026年10月からインボイス経過措置は70%に|影響と今やること」で詳しく紹介しています。
仕訳や消費税の集計をクラウドで管理したい方は、マネーフォワード クラウド会計を1か月無料で試せます(公式サイトによると、クレジットカード登録不要で、自動で有料プランに移ることはありません)。
②カスハラ対策が、すべての会社の義務に
2026年10月1日から、カスタマーハラスメント(顧客や取引先からの度を越えた言動)への対策が、すべての事業主の義務になりました。従業員の人数による猶予はありません。同じ日から、就職活動中の人(求職者)へのセクハラ対策も義務になっています。
相手は一般のお客さまだけではありません。施主・元請・取引先など、会社どうしの取引の相手からの言動も対象です。建設業なら、施主からの長時間の電話や暴言、現場での怒鳴り声、筋の通らない手直しの要求などが当てはまりやすい場面です。逆に、自社の社員が取引先の人へカスハラをしないよう、気をつけることにも努めるよう求められています。
会社がやること(5つ)
- カスハラを許さない方針を決めて、社内に知らせる
- 相談窓口(担当者)を決める
- 起きたときの対応の流れを決めておく
- 暴力・脅しなど特に悪質な場合の対応(警察への通報、取引を断る判断など)を決めておく
- 相談した人のプライバシーを守り、不利益な扱いをしない

ゼロから文書を作る必要はありません。厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(令和8年度改訂版)」に、方針や対応の流れの例が載っています。就業規則への追記もあわせて検討しましょう。

③最低賃金の改定:発効日は都道府県ごとに違う
2026年度の最低賃金は、全国加重平均で1,177円(56円の引き上げ)です。東京は1,280円で、10月1日に発効しました。
注意したいのは発効日です。10月1日の都道府県もあれば、11月・12月の県もあります。地方の現場で人を雇う会社は、その現場がある都道府県の額と発効日で確かめます。時給の人だけでなく、日給・月給の人も対象です。日給制の人は日給を、月給制の人は月給(通勤手当・家族手当などを除く)を、1時間あたりに直して比べます。
首都圏の新しい額と、日給・月給の確かめ方は「【2026年】最低賃金の改定|建設業の日給・月給チェック」にまとめています。
④パートの社会保険:「月8.8万円」の条件がなくなった(51人以上の会社は加入もれの確認を)
パート・アルバイトが社会保険(健康保険・厚生年金)に入る条件から、「月額賃金8.8万円以上」(いわゆる106万円の壁)がなくなりました。2026年10月1日からです。
対象は、厚生年金に入っている人が51人以上の会社です。こうした会社では、週20時間以上働く学生でないパートは、月収にかかわらず加入の対象になります。50人以下の会社は、人数の条件が残っているため、今回は直接の対象ではありません(労使で合意してパートを社会保険に入れている会社=任意特定適用事業所は対象です)。
ただし、この変更で新しく加入する人は、ほとんど出ません。全国の最低賃金が時給1,016円を超えたため、週20時間以上働くパートは、すでに月8.8万円の条件を満たしているからです。厚生労働省のリーフレットも「賃金要件を意識する必要がなくなります」と説明しています。
会社がやること
- 週20時間以上働くパートが、もれなく社会保険に入っているか確かめ直す
- 加入もれがあれば資格取得届を年金事務所に出す(届書の様式も10月に一部変わっています)
- パートを雇うときは、月収ではなく「週20時間以上か」で加入を判断する
社会保険料が変わったときの給与明細の直し方は「算定基礎の結果はいつから?給与明細の修正手順7つ」も参考にしてください。
⑤50人以下の会社向け:パートの保険料を軽くできる制度が始まった
50人以下の会社でも、労使で合意すればパートを社会保険に入れられます(任意特定適用事業所)。2026年10月1日から、この場合に使える「保険料調整制度」が始まりました。
新しく加入する標準報酬月額12.6万円以下(月収おおむね13万円未満)のパートの保険料を、最長3年間軽くできる仕組みです。軽くした分はいったん会社が負担しますが、あとで納める保険料から差し引かれます。ただし、2026年9月30日以前からすでに任意特定適用事業所だった会社は対象外です。
使う前に知っておきたい注意点もあります。
- 一度始めると、途中でやめられない
- 一部の人だけでなく、対象のパート全員に使われる
- 3年目は、軽くなる分が半分になる
- 申し出の期限は、任意特定適用事業所になった日から2年を経過した日が属する月の前月まで
使うときは、日本年金機構の「保険料調整制度」のページで条件を確かめてください。
⑥パート・有期社員の労働条件通知書に一文を追加
パートタイム・有期雇用労働法の省令と指針が改正され、2026年10月1日から施行されました。パートや期間を決めて雇う人を新しく雇うとき(期間の定めがある契約を更新するときを含む)、労働条件通知書に「正社員との待遇の違いについて、説明を求めることができる」旨を書くことが加わりました。
あわせて、同一労働同一賃金ガイドラインに、退職手当・家族手当・住宅手当などの考え方が加わっています。期間を決めて現場作業員や事務員を雇っている会社は、次の2つを見直しましょう。
- 労働条件通知書のひな形(厚生労働省の記載例が公開されています)
- 正社員にだけ出している手当の支給基準
⑦一人親方本人に関係すること
2割特例は「9月30日を含む課税期間」が最後
インボイス登録した小さな事業者の消費税を軽くする「2割特例」は、10月に一斉に終わるわけではありません。使えるのは「2026年9月30日を含む課税期間」までです。個人事業主なら2026年分(1〜12月)が最後、法人なら9月30日を含む事業年度が最後になります。
個人事業主には、2027年分と2028年分に「3割特例」が用意されました。インボイス登録をきっかけに課税事業者になった人などで、2年前の課税売上高が1,000万円以下の人が対象です。法人には後継の特例はありません。元請の立場なら、外注先の一人親方に「来年から消費税の計算が変わるかもしれない」と一声かけておくと親切です。
国民年金の「育児期間の保険料免除」が始まった
2026年10月1日から、国民年金の第1号被保険者(一人親方・自営業など)が1歳までの子を育てる期間、保険料が免除されるようになりました(実父母・養父母が対象。父・養父母は最長12か月、実母は産前産後の免除に続く9か月)。所得の条件はなく、免除された期間も保険料を納めたものとして年金額に反映されます。任意加入の人は対象外です。会社の手続きではなく、本人が市区町村の窓口・郵送・電子申請で届け出ます。

「10月から」と勘違いしやすい制度の早見表
解説記事やSNSでは「10月から」とまとめて紹介されがちですが、実際は時期が違う制度です。
| 制度 | 正しい時期 |
|---|---|
| 生活道路(中央線のない道路など)の法定速度30km/h | 2026年9月1日から |
| 経審の改正(W点の見直し) | 2026年7月1日から |
| 公益通報者保護法の改正 | 2026年12月1日から |
| 社会保険の会社の人数の条件の縮小(36人以上へ) | 2027年10月から |
| ストレスチェックの50人未満の事業場への義務化 | 2028年4月から |
| 雇用保険の加入条件の拡大(週10時間以上へ) | 2028年10月から |
なお、2024年に改正された建設業法は2025年12月12日に全面施行済みで、2026年10月に新しく施行される部分はありません。また、化学物質を扱う作業の「個人ばく露測定」は、10月1日から、追加講習を修了した作業環境測定士などが行うことが義務になりました。屋内で金属アーク溶接を続けて行う作業場で、作業方法を新しく取り入れる・変えるときの測定も対象なので、心当たりのある会社は確かめておきましょう。
今月中にやることリスト
チェックリストで当てはまった項目だけ、10月中に済ませましょう。
- 経理:会計ソフトの経過措置の割合(70%)を確かめ、9月分と10月分の仕入れを分けて入力する
- 総務:カスハラ対策の方針と相談窓口を決めて、社内に知らせる
- 給与:最低賃金を下回る人がいないか、現場の都道府県の発効日に合わせて確かめる
- 社会保険(51人以上):週20時間以上のパートに加入もれがないか確かめる
- 雇用:パート・有期社員の労働条件通知書のひな形を直す
- 外注先:一人親方に2割特例の終わりと3割特例を伝える
まとめ:自社に関係する項目から、1つずつ片づけよう
2026年10月の制度変更は数が多く見えますが、どの会社にも関係するのはカスハラ対策と最低賃金の2つです。あとは、外注のしかた・会社の人数・雇い方によって決まります。
制度の変更は、知っているかどうかより「自社の作業に落とし込めたか」で差がつきます。チェックリストで拾った項目を、今月のやることリストに書き込むところから始めてみてください。
インボイスの割合の切り替えのように、会計ソフトの設定で処理する作業も増えています。会計ソフトを見直すなら、弥生会計 Nextは最大2か月無料で試せます。

※この記事は2026年10月4日時点の国税庁・厚生労働省・日本年金機構・警察庁・消費者庁・国土交通省の公表資料をもとに作成しています。


