

今回の記事でわかること
- 建設業の会計が一般業種と違う理由
- 建設業向け会計ソフト主要5選の比較
- 弥生とマネーフォワードの向き不向き
- 規模別のおすすめと導入前の確認事項
建設業で経理を担当していると、こんな悩みはありませんか?
- 工事別の原価が見えにくい
- 外注費・材料費の仕訳に毎回迷う
- 複数現場を抱えると月次の締め作業が大変
- 弥生とマネーフォワード、どちらが建設業に向いているか分からない
この記事では、建設業の会計処理に対応できる主要ソフトを比較し、自社に合った選び方を解説します。「どれを選べばいいか分からない」という方の参考になれば幸いです。

建設業の会計が一般業種と違う理由

まず前提として、建設業の会計は一般的な小売業・サービス業とは大きく異なります。会計ソフトを選ぶ際も、この違いを踏まえることが重要です。
①工事別原価管理が必要
建設業では、案件(工事)ごとに材料費・労務費・外注費・経費を管理する「工事別原価管理」が求められます。一般企業では商品や部門ごとのコスト管理が中心ですが、建設業では「この現場でいくら使ったか」を工事単位で把握しなければなりません。
これに対応するためには、会計ソフト側で「工事コード」「案件コード」などを設定して仕訳を紐付ける機能、または専用の原価管理システムとの連携が必要になります。
②完成工事高・未成工事の管理
建設業の売上(完成工事高)は、工事が完成・引渡しされた時点で計上するのが原則です(工事完成基準)。工事が長期にわたる場合は「工事進行基準」を用いることもあります。
進行中の工事にかかった費用は「未成工事支出金」として資産計上し、完成時に原価へ振り替えます。この処理を正確に行うためには、ソフト側での工事ステータス管理・振替仕訳のサポートがあると業務が大幅に楽になります。
③外注費・人工費の管理
建設業では下請け業者への外注費や、一人親方への人工代が頻繁に発生します。これらは「外注費」として計上しますが、消費税の処理(インボイス制度への対応)や、源泉徴収の要否など、複雑な判断が伴います。
インボイス制度(適格請求書等保存方式)の導入により、2023年10月以降は仕入税額控除の適用に登録番号の確認が必要になっています。ソフト側でインボイス対応の仕訳・請求書管理ができるかどうかは重要なポイントです。

建設業向け会計ソフト比較|主要5選
建設業の経理担当者に多く使われている会計ソフトを5つ紹介します。それぞれの特徴・建設業への適合性・価格帯を比較します。
①弥生会計(やよいの青色申告・弥生会計オンライン)
弥生は国内シェアNo.1クラスの会計ソフトで、中小企業・個人事業主から中規模企業まで幅広く利用されています。操作性がシンプルで、簿記の知識が少ない事務担当者でも扱いやすい点が特徴です。
建設業への適合性:基本的な勘定科目(外注費・材料費・未成工事支出金など)には標準対応しています。ただし、工事別原価管理は標準機能では限定的で、工事台帳ソフトや施工管理ツールとの連携が別途必要になるケースが多いです。
価格帯:弥生会計オンラインは年額26,000円〜(セルフプラン)。サポートプランは年額38,000円〜程度。
こんな会社に向いている:小規模な建設会社・個人事業主で、工事別原価は別ツールで管理し、会計・税務申告だけ対応したい場合。税理士との連携がしやすい。
②マネーフォワードクラウド会計
マネーフォワードクラウド会計は、銀行口座・クレジットカードとの自動連携が強みのクラウド会計ソフトです。スマートフォンからも操作でき、リアルタイムの残高確認・経費精算との連動が便利です。
建設業への適合性:建設業特有の勘定科目にも対応でき、カスタマイズ性が高い点が強みです。クラウドベースなので複数のデバイスから利用でき、現場と事務所が離れている会社でも使いやすいです。工事別管理は専用の原価管理ソフトとの連携が推奨されます。
価格帯:スモールビジネスプランで月額2,980円〜(年払い時)。ビジネスプランは月額4,980円〜。
こんな会社に向いている:クラウド環境を積極活用したい会社。給与・経費精算・請求書発行をマネーフォワードで一元管理したい場合。
③freee会計
freee会計は「誰でも使える会計ソフト」をコンセプトに、簿記知識がなくてもAI自動仕訳で帳簿が作れる点が特徴です。スタートアップや小規模事業者に人気があります。
建設業への適合性:一般的な経費処理・確定申告には対応しています。ただし建設業特有の工事原価管理・未成工事の処理などは他社ソフトと比べると対応が限定的です。建設業の勘定科目体系に慣れていない場合は設定に工夫が必要です。
価格帯:スターター月額1,980円〜、スタンダード月額3,980円〜(年払い時)。
こんな会社に向いている:事務担当者が少なく、できるだけ自動化したい小規模業者。請求書・経費管理をfreeeで一括したい場合。
④勘定奉行クラウド(OBC)
勘定奉行は中堅〜大企業向けの老舗会計ソフトです。細かいカスタマイズが可能で、建設業向けの原価管理機能も充実しています。
建設業への適合性:工事別原価管理・部門別管理・プロジェクト別損益管理など、建設業の複雑な会計ニーズに対応できる機能が豊富です。会計事務所との連携実績も多く、信頼性の高いシステムです。
価格帯:月額30,000円程度〜(規模・オプションによる)。導入・設定費用が別途かかることが多い。
こんな会社に向いている:中規模以上の建設会社で、会計・原価・給与を一元管理したい場合。内部統制・監査対応が必要な企業。
⑤建設業向け専用ソフト(蔵衛門・建設ドットウェブなど)
建設業専用に開発されたソフトは、工事台帳・原価管理・請求書発行・労務管理まで一括して対応できるオールインワンタイプです。
建設業への適合性:建設業の業務フローに特化しているため、工事別原価の自動集計・完成工事高の管理・建退共の証紙管理など、汎用会計ソフトでは難しい機能が標準で揃っています。
価格帯:月額10,000〜50,000円程度(機能・規模による)。初期費用がかかる場合が多い。
こんな会社に向いている:工事件数が多く、複数の現場を同時に管理している建設会社。会計だけでなく工程管理・書類作成まで一元化したい会社。

弥生とマネーフォワード、建設業にはどちらが向いているか
最も多く比較される弥生とマネーフォワードを、建設業の視点で詳しく比較します。
操作性・使いやすさ
弥生は長年にわたって改善されてきた日本語インターフェースで、仕訳の入力方法が直感的です。「振替伝票」「入金伝票」など従来の帳簿感覚で操作できるため、簿記を学んだことがある担当者には馴染みやすいです。
マネーフォワードは銀行口座の取引を自動取得して仕訳候補を提示する機能が強力で、手入力の負担を大幅に減らせます。スマートフォンアプリも充実しており、外出先での確認・承認に向いています。
銀行・カード連携
両社とも主要銀行・クレジットカードとの自動連携に対応していますが、マネーフォワードの方が連携先の数が多く、自動仕訳の精度も高い評価を受けています。材料費・経費を法人カードで支払っている会社は、マネーフォワードの自動連携機能が特に便利です。
インボイス対応
弥生・マネーフォワードともにインボイス制度(適格請求書等保存方式)に対応しています。外注先の登録番号管理・80%・50%控除の自動計算・請求書の適格請求書要件確認など、実務に必要な機能は両社とも整備されています。
工事別原価管理への対応
弥生会計では「補助科目」を使って工事ごとのコストを管理する方法が一般的です。ただし、工事台帳のような一覧表示・進捗管理は難しく、補完ツールが必要になることが多いです。
マネーフォワードも同様で、標準機能での工事別原価管理には限界があります。どちらの場合も「建設業向け工事台帳ソフト」と連携させることで対応するケースが多いです。
税理士・会計事務所との連携
弥生は税理士・会計事務所での使用率が非常に高く、「顧問税理士が弥生を使っているから」という理由で選ばれることも多いです。データの受け渡しや税務申告のサポートを受けやすい環境です。
マネーフォワードも税理士との連携(クラウドで共有・確認)に対応しており、リアルタイムで税理士にデータを共有できる点は便利です。顧問税理士がどちらに対応しているかで選ぶのも一つの方法です。


会計ソフト選びのポイント|建設会社の規模別おすすめ
個人事業主・一人親方の場合
確定申告(青色申告)が目的であれば、弥生の「やよいの青色申告オンライン」または「freee会計」がコスト面でも機能面でも十分です。工事別原価はExcelで補完しながら運用するケースが多いです。
インボイス対応・経費精算・売掛金管理まで一気通貫で対応したいなら、マネーフォワードのスモールビジネスプランも選択肢に入ります。
従業員10名未満の小規模建設会社
弥生会計オンライン、またはマネーフォワードクラウド会計のどちらかで十分対応できます。選ぶ際のポイントは「顧問税理士が使っているソフト」「銀行口座の自動連携を重視するか」「使いやすさ(弥生)かリアルタイム確認(マネーフォワード)か」の3点で決めると失敗しません。
従業員10〜50名程度の中規模建設会社
工事別原価管理・給与計算・勤怠管理・会計を一元管理したいなら、建設業専用ソフトまたは勘定奉行クラウドへのステップアップを検討する時期です。汎用会計ソフト+工事台帳ソフトの組み合わせでもある程度対応できますが、データ連携の手間が増えます。
従業員50名以上・大型工事を扱う建設会社
勘定奉行・建設業専用ERPシステムなど、より高機能なシステムの導入が現実的です。内部統制・監査対応・多部門管理が必要な規模では、汎用クラウド会計ソフトだけでは限界があります。システム導入前にIT導入補助金の活用も検討してみてください。
建設業の会計で特に重要な勘定科目の整理
どのソフトを使う場合でも、建設業特有の勘定科目を正しく設定・使用することが正確な会計の基本です。
完成工事高・完成工事原価
建設業の「売上」は「完成工事高」と呼びます。対応する原価は「完成工事原価」で、材料費・労務費・外注費・経費の4要素から構成されます。一般会計の「売上高」「売上原価」と対応する概念ですが、勘定科目名が異なるため、会計ソフトの設定時に確認が必要です。
未成工事支出金・未成工事受入金
工事が完成する前に発生した原価は「未成工事支出金」(資産)として計上します。工事完成・引渡し時に「完成工事原価」へ振り替えます。一方、着手前や施工中に受け取った代金は「未成工事受入金」(負債)として計上し、工事完成時に「完成工事高」へ振り替えます。
外注費・人工費
下請け業者への発注費用は「外注費」として計上します。一人親方への人工代も外注費になる場合が多いですが、実態が「雇用」に近い場合は労働者性が問われることがあります。外注費として計上する場合は適切な請負契約・請求書・インボイス登録番号の確認が必要です。

会計ソフト導入前に確認すべき3つのこと
会計ソフトを導入する前に、以下の3点を確認しておくと、選定・導入後のミスマッチを防げます。
- 顧問税理士が対応しているソフトを確認する:税理士がデータを受け取りやすいソフトを使うと、月次・年次の確認作業がスムーズになります。まず税理士に相談することをお勧めします。
- 既存の管理ツールとの連携可否を確認する:工事台帳・施工管理ソフト・勤怠管理システムなど既存ツールとのデータ連携(CSV取込・API連携)ができるか確認します。手入力の二重作業が発生すると業務効率が下がります。
- 無料トライアルで実際に使ってみる:主要ソフトは30日程度の無料トライアルを提供しています。実際の仕訳入力・帳票出力を試してから決定することで、導入後の「使いにくい」を防げます。

まとめ|建設業の会計ソフト選びは「原価管理と連携できるか」が鍵
建設業の会計ソフト選びで最も重要なポイントは、工事別原価管理にどこまで対応できるかです。汎用会計ソフト(弥生・マネーフォワード・freeeなど)は使いやすさ・コスト面で優れていますが、工事台帳や原価管理は別ツールとの連携が必要になるケースが多いです。
会社の規模・管理したい情報の範囲・顧問税理士との関係性を整理した上で、自社に合ったソフトを選んでください。まずは無料トライアルで「使いやすさ」を体験してみることをおすすめします。
この記事が、建設業の経理担当者の皆さんがソフト選びで迷う時間を短縮するための参考になれば幸いです。

この記事のまとめ
- 建設業は勘定科目が独特
- 主要5選から規模別に選ぶ
- 弥生=安定・MF=自動化
- 原価管理との連携が最重要ポイント
以上、けいりんでした!
