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「建設業の給与計算って現場手当や日当があって複雑…労務費として工事原価に算入する方法もよくわからない」


今回の記事でわかること
- 建設業の給与計算の特徴(月給・日給・各種手当)
- 労務費として工事原価に計上できる費用の範囲
- 工事別の労務費配分方法(時間比率・工事別記録)
- 社会保険料(会社負担分)の労務費への含め方
- 給与計算ミスが起きやすいポイントと対策

🔍 先に結論
- 労務費の基本は現場で働く人の人件費
- 工事原価に計上できる費用の範囲を整理
- 工事別の配分方法を解説
- 給与計算ミスが起きやすいポイントと対策も紹介

建設業の給与体系の特徴
建設業の給与体系は、一般的な企業と異なる特徴があります。正社員の月給制のほか、現場作業員には日給制・日給月給制(出勤日数×日給)が多く採用されています。また、現場手当・危険作業手当・通勤手当・食事手当・技術手当など、多様な手当が設けられているケースが多いです。
私が担当する会社でも、現場職人は日給月給制で現場手当付き、事務スタッフは完全月給制という体系です。さらに、夜間作業や休日出勤が多い繁忙期には、残業代・深夜割増・休日割増の計算が複雑になります。給与計算の基礎として「割増賃金の計算基礎」を正確に把握することが重要で、割増賃金の計算対象から除外できる手当(通勤手当・住宅手当等)と、含めなければならない手当を区分しておく必要があります。

労務費として工事原価に計上できる費用の範囲
工事原価の「労務費」として計上できるのは、現場工事に直接従事する作業員の人件費です。具体的には、給与・賞与・各種現場手当・社会保険料(会社負担分)・退職給付費用などが含まれます。
一方、本社の事務担当者・営業担当者・役員の人件費は「販売費及び一般管理費」に計上します。現場監督については、現場専任であれば労務費、本社業務と兼務であれば時間比率などで按分して工事原価と一般管理費に配分します。この区分を誤ると、工事別の採算が正確に把握できなくなります。
社会保険料(健康保険・厚生年金保険の会社負担分)と労働保険料(雇用保険・労災保険の会社負担分)も、対応する人件費と同じ区分(工事原価または一般管理費)で処理します。作業員の社会保険料は工事原価の労務費に含め、事務スタッフの社会保険料は一般管理費に含めるのが原則です。




工事別の労務費配分方法
複数の工事を同時進行している場合、各作業員が「どの工事に何時間働いたか」を把握して、工事別に労務費を配分する必要があります。この配分が正確でないと、工事別の原価管理精度が低下します。
最も精度が高い方法は、日々の就業記録(タイムカード・勤怠管理システム)と「作業日報」を組み合わせて、工事別の就業時間を把握する方法です。月末に作業員ごとの工事別就業時間を集計し、その比率で給与・労務費を各工事に配分します。
中小建設業者では、作業員が1つの工事に専任していることが多く、その場合はその工事の労務費として全額計上できます。しかし同じ週に複数の工事を掛け持ちする場合は、日報での記録が必須です。私の会社では、現場の職長が毎日の作業終了後にスマートフォンで工事番号・作業時間を入力するシステムを導入してから、労務費の配分精度が大幅に向上しました。

給与計算と工事原価への振替の月次フロー
建設業の給与計算は、毎月以下の流れで進めるとミスが起きにくくなります。
- 勤怠の集計:タイムカードや作業日報から、作業員ごと・工事別の就業時間を集計
- 給与額の確定:基本給・各種手当・残業代・社会保険料・所得税・住民税を計算し、総支給額と差引支給額を算出
- 工事別の労務費配賦:作業員ごとの就業時間比率で、給与・法定福利費を各工事に振り分け
- 仕訳の入力:未成工事支出金(または労務費)・賃金・法定福利費・預り金などを計上
- 納付処理:源泉所得税・住民税は翌月10日、社会保険料は当月末納付期限を確認
この5ステップを毎月決まった順序で回すことで、月末の経理処理が一気にスムーズになります。特に③の工事別配賦は、後回しにすると勤怠記録の記憶が薄れて精度が落ちるため、給与計算と同じタイミングで行うのが鉄則です。
実際の労務費の仕訳例(数値シミュレーション)
具体例で確認してみましょう。現場作業員のAさん(日給月給制・現場手当2万円込みで総支給27万円)が、当月にA工事に120時間、B工事に40時間(合計160時間)従事したケースで考えます。
- 総支給額:270,000円
- 社会保険料(会社負担分):約37,000円
- 労務費合計:307,000円
- A工事への配賦:307,000円 × 120/160 = 230,250円
- B工事への配賦:307,000円 × 40/160 = 76,750円
仕訳イメージは次のとおりです(簡略表記)。
(借方)未成工事支出金 A工事 230,250 /(貸方)賃金 202,500+法定福利費 27,750
(借方)未成工事支出金 B工事 76,750 /(貸方)賃金 67,500+法定福利費 9,250
この配賦処理を毎月正確に積み上げることで、工事別の実際原価と予算の差異が見えるようになります。「A工事の労務費が予算より15%超過」など、早めにアラートを出せるのが工事別原価管理の最大のメリットです。なお、作業員が1つの工事に専任の場合は配賦計算が不要で、給与全額をその工事の労務費に直接計上します。

給与計算ミスが起きやすいポイントと対策
建設業の給与計算でよくあるミスの一つが割増賃金の計算基礎の誤りです。残業代・休日手当・深夜手当の計算に使う「基礎賃金」は、通勤手当・住宅手当・家族手当などは除外できますが、現場手当・技術手当などは原則として含める必要があります。この判断を誤ると労働基準法違反になる可能性があるため、不明な場合は社会保険労務士に確認することをおすすめします。
次によくあるのが雇用形態の判断ミスです。形式上は「外注(一人親方)」として処理しているが、実態は「雇用関係(労働者)」に近い場合、税務調査で「給与」と認定されることがあります。外注と給与の区分については別記事で詳しく解説していますが、作業の指揮命令関係・専属性・代替性・報酬の性質などを総合的に判断することが重要です。
また社会保険の加入漏れも建設業でよく見られます。週20時間以上・月8.8万円以上の収入がある短時間労働者(パート・アルバイト)については、一定の条件下で社会保険への加入が必要です。建設業では短期・スポットで雇う人材が多いため、加入要件の確認を怠りがちです。
建設業の給与計算・労務費ポイント まとめ
- 労務費には給与・社会保険料(会社負担分)・退職給付費用を含める
- 現場作業員の人件費→労務費(工事原価)、管理部門→一般管理費で区分
- 工事別の労務費配分は日々の作業日報・就業記録を活用
- 割増賃金の計算基礎(含める手当・除外できる手当)を正確に把握
- 外注・雇用の判断基準を明確にし、社会保険の加入漏れを防ぐ
給与計算・労務費管理を正確に行うことで、工事別の原価管理精度が上がり、会社全体の収益管理も向上します。労務費の工事別配分に課題を感じている方には、建設業対応の会計ソフトの活用がおすすめです。
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